ネイル論争勃発!
「……なんだその爪は。すぐにおとしてこい」
次の日、任務のために正装に身を包んだ俺にそう言ったのは柊平さんだった。
「え~? かっこよくない?」
「……私にはよくわからない感覚だな」
「そうかな~。俺はいいと思うんだけど」
「……お前のように、それといいと思う者もいるんだろう。その感覚を否定するつもりはない。だが、今回は一色隊の任務として参加するのだ。その場に合わせた身だしなみを心がけるべきではないだろうか」
まあ、柊平さんの言うことはもっともだよね~。
こういうのにお固い人もいるかもしれないし。
「わかった。でも柊平さん、そんな時間なくない? すぐに出発でしょ~?」
「……除光液というもので拭けば、すぐにおちるんじゃないのか?」
「無理っすよ! これはマニキュアじゃなくてジェルネイルなんで! 特に虹太さんの爪は入念にケアしたいし、オフするならまあまあ時間がかかるっす!」
柊平さんにそう言ってくれたのは、もちろん颯くんだ。
そうそう、塗るのも時間がかかれば、おとすのも大変なんだ~。
「あ? 無理矢理剥がせねーのか?」
蒼一朗さんが俺の爪を触ろうとするから、俺は慌ててその手を避けた。
「蒼一朗さん、やめて~! 蒼一朗さんの力だと、爪ごと剥がれそうじゃん!」
「そうっすよ! そんなことしたら、虹太さんの爪がボロボロになっちゃうっす! ピアノが弾けなくなったらどうするんすか!?」
「お、おう……。なんかわりいな……」
俺と颯くんの剣幕に、蒼一朗さんもタジタジだ。
「虹太さん、これをつければ平気っすよ!」
そう言って颯くんが渡してくれたのは、正装用の白い手袋だ。
「お~☆ 確かにこれならパーティーっぽいし、爪も見えないじゃん! 柊平さん、これをつけてくから今おとさなくてもいーよね?」
「……それだと、手袋を外した時に見えてしまうだろう」
「え~! でも、今おとすのはほんと無理だよ~!」
「……わかった。だが、もう一つ処置を施させてもらう。春原、一つ頼めるか」
柊平さんに何か言われたりっくんは、どこかに行っちゃった。
戻ってきた時には、その手には包帯が握られてたんだ。