俺には無理なことをやれちゃう君が、とってもうらやましいよ
それからは、一色隊のみんなに聴いてもらうのはもちろんだけど、公園とかでやってたミニコンサートも復活させたんだ。
夏生くんってアイドルの子に頼まれて、作曲もやったりね~。
人に聴いてもらう機会が増えたから、だいぶ昔の感覚が戻ってきたよ。
こんな感じで、音楽生活はめっちゃ充実してる☆
軍人生活では、この一ヶ月くらいがすっごい大変だった!
爆発事件に巻き込まれそうになったり、心ちゃんがさらわれたり……。
心ちゃんがさらわれた日は、俺、家にいなかったんだ。
事情は説明してもらったけど、俺にできることなんてなんにもなくて……。
そのまま待ってたら、透花さんが心ちゃんを連れて帰ってきたんだよね。
帰ってきた心ちゃんは、大切な話があるって言って俺たちを集めた。
「……というわけで、僕、半分人間じゃない。竜人なんだって……」
心ちゃんは、お父さんに会って色々話を聞いたらしい。
そのことを、包み隠さずみんなに話してくれたんだ。
「今まで隠してたけど、目も、こっちだけ赤いんだ……」
そう言うと、いつも髪の毛で隠してる左目を見せてくれた。
……でも、俺には左右の目の色の違いなんてわかんない。
俺は生まれつき、色を識別する能力が鈍いからさ……。
赤じゃない方の心ちゃんの目が、何色かもわかんないんだよ。
心ちゃんに竜人の血が混じってるからって、差別するような人はいない。
まあ、動物と話せるし、元々不思議なところはあったもんね~。
……それに、ここにいる人は、みんな何かを隠してる気がするんだ。
俺も、奏太くんに出逢わなければきっと音楽には戻らなかったと思う。
……この目のことも、自分から誰かに話したことはない。
透花さんとりっくんは気付いてるみたいだけど……。
みんなを信用してないわけじゃないんだけど、怖いんだよね……。
目のことを知ったら、俺を見る目が変わっちゃうんじゃないかって。
かわいそうって、思ってほしくないんだ。
「……その眼、これからどうするの。隠し続けるのが大変なら、学校に行ってる時だけとか、一時的に目の色を黒くできる薬を用意するけど」
「……理玖さん、ありがと。でも、大丈夫。……これからは、隠さない。この目は、僕がお父さんの子どもである印だから。びっくりする人もいると思うけど、ちゃんと説明すればきっと平気、だと思うし……」
「……そう」
……心ちゃんはすごいなぁ。
みんなと違う目のことを、否定せずに受け入れて、他人に話せるんだもん。
……俺は、まだそれはできない。
俺の方が年齢はお兄さんなのに、心ちゃんの方がよっぽど大人だよね。