表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
透く花の色は  作者: 白鈴 すい
第六話 ヒルガオが見た兄弟のかたち
61/780

ぼくのじまんのおにいちゃん

 救急車の出発を見送ってから、蒼一朗は恵輔たちと別れ白組の応援席に戻った。

 そこで待っていたのは、レースを放棄したことへの罵詈雑言ではなく温かな拍手だった。

 優勝こそ逃してしまったものの、誰も気付いていなかった老婆の異変にいち早く気付いた彼には次々に賞賛の言葉がかけられた。


「あんたすごいね! あんな距離からおばあさんの様子がおかしいって気付くなんてさ!」

「ほんと、大した兄ちゃんだぜ! 処置も早かったし、あのばあさんはきっと助かるさ!」

「隣を走ってた兄ちゃんも一緒にコースを外れていくもんだから、驚いたよ~!」

「確かにそうだ! なんか、男の友情って感じだったよな~!」


 周囲の人たちからの声かけが一段落したところで、蒼一朗は大和と向き合った。

 レースを放棄してしまったことを、まだ謝っていないからだ。


「大和、ごめんな……。絶対勝つって約束したのに……」


 申し訳なさそうな蒼一朗の言葉を聞いて、大和はふるふると首を横に振った。

 そして、“おにいちゃん、かっこよかったよ。”と書いた紙を見せる。


「でも……」


 納得いかない様子の蒼一朗に、“いっしょうけんめいおばあちゃんをたすけようとしてるおにいちゃん、ほんとうにかっこよかった。ぼくのじまんのおにいちゃんだよ!”と書き綴った文章を見せる。

 その表情は、今日一番と言ってもいいくらい輝いたものだった。


「……そっか。大和がそう思ってくれたんなら、それでいいか!」


 蒼一朗も眩しい笑顔を大和に返すと、彼の頭を優しく撫でた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ