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透く花の色は  作者: 白鈴 すい
第四十七話
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想像すると、ワクワクしない?

 ……二人とも喋らないまま、少しだけ時間が過ぎた。

 ハッと我に返ったような動作をすると、奏太くんは拍手をしてくれる。


「す、すみません! 椎名さんの演奏がすごすぎて意識が飛んでました……!」


 そう言った奏太くんの顔は、ちゃんと笑顔だ……。

 その言葉に安心した俺は、へにゃりと笑う。

 しばらくピアノを弾いてなかった間に変わったのは、演奏技術だけじゃない

 ……聴衆からの反応にも、ずいぶん臆病になっちゃったんだな~。

 昔は、どんな反応をされてもぜーんぜん平気だったのにさ。

 まあ、これもいろんな人に聴いてもらって徐々に慣れてくしかないよね。


「最後は僕が椎名さんに聴いてもらった曲だったのに、僕が弾いた時とは全然違いました……! 音の一つ一つが、本当に楽しそうっていうか、キラキラしてるっていうか……。 うまく言えないんですけど、感動しました!!」

「ありがと~☆ 奏太くんにそう言ってもらえて、とっても嬉しいよ♪」

「どうしてこんな風に弾けるんですか!? 僕にも教えてください!」

「う~ん、どうしてって言われても難しいなぁ。俺、感覚派だからうまく説明できないし。ピアノを弾く時に、これだけは大切にしてるってことならあるよ~」

「なんですか!?」

「自分の演奏を聴いてくれるお客さんの、笑顔を想像すること!」

「笑顔を、ですか……?」

「うん♪ 今回は、奏太くんに喜んでほしいなぁ、笑ってほしいなぁって思いながら弾いたんだ~。要するに、気持ちを込めて弾くってことかな☆」

「でも、気持ちだけでこんなに……?」

「奏太くんさ、前俺にピアノを聴かせてくれたじゃん? あの時俺、ボロボロ泣いちゃったよね。あれってやっぱり、奏太くんが心のこもった演奏をしてくれたからだと思うんだ。すっごくすっごく感動したんだよ」

「僕の演奏が、椎名さんを感動させた……」

「気持ちを込めて弾けば、それは絶対に誰かに届くんだよ。俺はそう信じてる。……って、しばらくピアノから離れてた俺が言っても説得力ないけどさ~」

「……いえ、そんなことないです。椎名さんの言葉、ちゃんとわかります」


 奏太くんはそう言うと、子どもらしい笑顔を見せてくれた。

 こういう顔が見れると、演奏してほんとによかったって思うよね~!

 しばらく雑談をしてたら、奏太くんがリュックから楽譜を何枚か取り出した。


「椎名さん、よかったらこれ、一緒に弾いてもらえませんか……?」

「これ、連弾の楽譜?」

「はい! 椎名さんと弾けたら楽しいだろうなって思って持ってきたんです」

「もちろんオッケーだよ~☆ じゃあ、早速やってみよっか!」

「え!? いきなりで大丈夫ですか!? 楽譜に目を通す時間とか……」

「へーきへーき♪ 初見は得意だから安心して!」

「……わかりました! じゃあ、よろしくお願いします!」


 この後は、連弾をしたり、奏太くんのピアノを聴かせてもらったりしたんだ。

 今考えても、すっごい楽しい時間だったな☆

 それから、最低でも月に一回は二人で弾く日を作ってるんだよ~。

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