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透く花の色は  作者: 白鈴 すい
第四十七話
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ちょっとだけ、昔話を聞いてね

 これは、今よりもちょっとだけ昔の話だよ。

 俺は手の怪我がきっかけで、世界の全てだった音楽を手放しちゃったんだ。

 ……一緒に生きていけないって思ったからそうしたのに、おかしいよね。

 離れたら、それはそれですっごく苦しいんだ……。

 ……未練がましく、ギターを弾いたり、作曲なんかしちゃったりしてさ。

 自分で決めたことなのに、俺ってほんとかっこわるいっていつも思ってた。

 そんな俺に、転機が訪れる。

 まずは、透花さんに出逢ったこと。

 これはもう、運命としか言いようがないよね!

 綺麗なお客さんだなぁって思ってた人と、偶然再会できるなんてさ♪

 ……透花さんのおかげで、もう一つの出逢いがあったんだから。

 それは、中条奏太くんっていうピアノが大好きな男の子と巡りあったこと。

 ……奏太くんに会えなかったら、二度とピアノを弾くことはなかったと思う。

 いつまでもウジウジしたまま、中途半端に音楽にしがみついてたかも……。

 奏太くんの演奏を聴いて、俺の中の気持ちが溢れ出してきたんだ。

 俺はやっぱり音楽が大好きで、ピアノをまた弾きたいって強く思った。

 ほんと、この二人には一生頭が上がらないよ~。


「椎名さん! こんにちは!!」

「奏太くん、いらっしゃい☆ あれ、なんだかテンション高いね~!」

「もう、楽しみすぎて! だって、椎名さんのピアノが聴けるんですから!!」


 またピアノを弾くって決めた日に、俺は奏太くんと一つの約束をしたんだ。

 それは、俺のリスタートの最初のお客さんになってもらうこと!

 ちゃんと練習したものを聴いてほしかったから、時間をもらったんだよ~。


「そんなに楽しみにしてくれてたなんて、なんか感激しちゃうよ~♪ 改めて、俺のリサイタルへようこそ! 楽しい演奏をお届けできればって思ってます☆」


 約束の日から、二ヶ月ちょっとかな?

 やっとその約束を果たせる日がきたんだよ~!

 この日のために、俺、めっちゃくちゃ練習がんばった!

 指も鈍ってたし、リズム感も狂っちゃってるんだもん……。

 ……まあ、今まで練習してなかったから自業自得なんだけどね。

 でも、怪我の影響が全然なくてほんとよかったな~。


(奏太くんに楽しんでもらうのはもちろんだけど、一番楽しいのは俺だよね~。鍵盤に触れるのが、嬉しくて仕方ない。だって俺は、音楽を愛してるから!)


 そんなことを考えながら、鍵盤に指を滑らせる。

 そして俺は、練習してきた曲を弾き始めたんだ――――――――――。

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