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手をつないでかえろう
⑨二人きりの場合
今日は誰も都合がつかなかったため、大和と美海は二人で帰路に着いている。
昨日までの賑やかな帰り道とは違い、とても静かだ。
暗いので大和も筆談することが出来ず、二人の間に会話はない。
「……やまとくん、手つながない?」
ふと、美海がそう言った。
大和も頷く。
お互いに、大人がいない帰り道を不安に思っていたのだ。
彼らはまだ小学一年生だ。
同年代の異性と手を繋ぐことが恥ずかしいという思考に至るには、まだ時間があるのだろう。
二人は手を繋いで歩く。
相変わらず会話はないが、二人を纏う空気はどこか優しいものになっていた。
二人きりだと――――かぞくでも、ともだちでもない。いつかはかわってしまうのかもしれないふあんていなかんけい。でも今は、手をつないでかえろう。




