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透く花の色は  作者: 白鈴 すい
第四十六話
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あたらしいおともだちができました!

⑧結城心の場合


 今日は心が迎えの当番だ。

 ぱかおも一緒に行きたいと言っていたのだが、今は家にいる。

 犬のふりをしての外出も増えてきてはいるものの、彼は未だに一色邸の人間以外への恐怖心を取り除けていないのだ。

 それに、先日負った怪我もまだ完治していない。

 行きたい気持ちをグッとこらえ、留守番をしているようだ。

 クラブの玄関近くの手頃な柱に、リードに繋がれた犬がいる。


「……こんにちは。君もお迎えに来たの……?」

(そうよ。あなたも?)

「うん……。妹を迎えに来たんだ……」

(あら、そうなの! あなた、私の言葉がわかるのね!)


 心はそのポメラニアンに挨拶をしてから、室内に入っていった。

 彼女が行儀よく家族を待っていると、外遊びを終えた数人の少年が現れる。


「おい! 犬がいるぞ!」

「ほんとだ! つないであるってことは、だれかの家の犬だよな!」

「さわってみようぜ!」


 少年たちは、思い思いの手つきで彼女に触れる。


(あ、あなたたち! そんな野蛮な手付きで触らないでちょうだい!)



 彼女の言葉は、少年たちに届くことはない。

 彼らの中には、犬を飼っているものはいないらしい。

 本人たちは普通に触っているのだろうが、彼女にとっては刺激が強いようだ。

 だが、ここで吠えては自分の家族に迷惑をかけてしまうかもしれない。

 そのように考えることが出来る賢い彼女は、ジッと耐えていたのだ。


「おぉ! ふわふわだ!」

「……でも、あんまり喜んでないよな」

「さわり方がいけないのかな? それとも、さわる場所か?」


 少年たちにも、彼女があまり気持ちよさそうではないのが伝わったらしい。


「……もっと優しく触ってあげて。背中や頭よりも、首の周りを撫でると喜ぶよ」

(あなた……!)


 そこに、大和、美海と一緒の心がやって来た。


「……美海、どういう風に触ればいいか教えてあげて」

「え、でも、みうあんまりワンちゃんはさわったことないよ……?」

「……大丈夫。いつもぱかおにやってるみたいにすればいいから」

「……わかった!」


 美海は彼女に近付くと、優しく首輪の周りを撫でる。

 余程気持ちがいいのか、彼女はすぐにとろけるような表情になった。


「みうすげぇ! めちゃくちゃよろこんでるじゃん!」

「おれもやってみたい!」

「おれも、おれも!」


 美海に言われたように、少年の一人が彼女に優しく触れる。

 先程までとは違い、彼女は明らかに気持ちよさそうな顔をしている。


「……ばいばい。またね」


 その様子を見て安心した心は、二人を連れて学童クラブを後にしたのだった。

 帰り道、美海はなぜかいつもよりも機嫌がよかった。


「……美海、嬉しそうだね」

「うん! さっきの男の子たちね、今まであんまりはなしたことなかったの! でもしんにいとあの子のおかげでおともだちになれたからうれしくて!」

「……そっか」

「しんにい! 今日はおむかえきてくれてありがとう!」


 そう言うと美海は、勢いよく心に抱き付いた。


「……どういたしまして。また来るからね……」


(美海って、なんでこんなにかわいいんだろ……?)


 心も蒼一朗と同じく、胸中ではシスコン全開の発言をしていた。

 結城心がお迎えに行くと――――あたらしいおともだちができました! しんにい、ありがとう!

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