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透く花の色は  作者: 白鈴 すい
第四十六話
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恋のキューピッド♡

⑥遠野晴久の場合


「こんにちは」

「はるにい!」

「大和くん、美海ちゃん、帰りましょう。今日の夕飯はハンバーグですよ」

「やったぁ! はるにいのハンバーグだいすき! やまとくんもだよね?」


 大和は、嬉しそうにこくこくと頷く。


「このおにいさんが、やまとくんとみうちゃんのごはんつくってくれるの?」


 すると、美海の友達が声をかけてきた。

 彼女の名前は、入江香澄という。

 美海と一番仲の良い友達なのだ。

 颯が来た時に話しかけてきたのも、昨日湊人に助けられたのも彼女である。


「そうだよ! はるにいは、りょうりがとっても上手なんだよ!」

「みうちゃんのおべんとうって、いっつもおいしそうだよね!」


 小学生なので普段は給食だが、冬休みなどの長期休暇の際には弁当を持ってクラブに通うのだ。

 その弁当は心や颯のものと同じく、大和と美海の分も晴久が手作りしていた。


「はるにいは、おかしづくりもとくいなんだよ! もうすぐバレンタインだから、チョコのおかしのつくりかたおしえてもらうやくそくしてるんだ!」

「楽しみですね。どんなお菓子を作りましょうか」

「バレンタイン……。みうちゃん、だれかにあげるの?」


 バレンタインという単語に、香澄が反応を示す。


「うん! おうちのみんなにあげるよていだよ! いちばん大きくできたのは、しんにいにあげるんだ! あっ、もちろんはるにいにもあげるからね!」

「ありがとうございます。すごく楽しみです」

「そ、そうなんだ……。み、みなとさんにもあげるの……?」

「みなとにい? うん! あげるよ!」

「そ、そっかぁ……」


 香澄がモジモジと何かを伝えたそうにしているが、二人には伝わらなかった。

 美海と同じように、晴久も色恋については鈍いようである。

 大和は何かをノートに書くと、こっそりと晴久だけに見せた。


『かすみちゃん、すきな人がいるみたい。いっしょにチョコつくりたいのかも』


 大和は、湊人の名前をあえて出さなかった。

 彼女の気持ちに確信があるわけではないし、その恋心は勝手に他人に伝えても良いものではないと分かっているからだ。


「………………………………! そうなんですね。それじゃあ……」


 晴久は、香澄に優しく声をかける。


「よかったら、香澄ちゃんも一緒にお菓子を作りませんか?」

「えっ……!?」

「こういうのは、みんなでやった方が楽しいですよ。ねえ、美海ちゃん」

「うん、たのしそー! かすみちゃん、いっしょにやろうよ!」

「うっ、うん……! やりたい!」

「やったー!! かすみちゃん、こうかんっこしようね!」

「うん! ともチョコってやつだよね!」

「作りたいお菓子があったら、遠慮せずに教えてくださいね」

「「はーい!!」」


 楽しそうな美海と香澄の姿を見ていると、大和も嬉しくなる。


(かすみちゃん、みなとおにいちゃんにわたせるといいなあ。……ぼ、ぼくはもらえるのかな。一つももらえなかったら、ちょっとかなしいかも……)


 バレンタインデーまで、あと数週間である。

 彼女たちは、当日をどのように過ごすことになるのだろうか。

 遠野晴久がお迎えに行ったら――――恋のキューピッド♡

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