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透く花の色は  作者: 白鈴 すい
第四十六話
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植物博士!+不名誉な称号

④春原理玖の場合


 今日は理玖が迎えの当番である。

 学童クラブまで迎えに行ったものの、室内に美海と大和の姿は見当たらない。

 どうやら、庭で遊んでいるようだ。


「よかったら庭まで行って、二人に声でもかけてあげてください」


 職員に促され、理玖は庭に向かう。

 そこには、花壇の前にしゃがみ込み何かを話す子どもたちと職員がいた。

 その中、大和と美海も混じっているようだ。


「さいきん、かだんがさみしいよね……」

「うん。はるみたいに、たくさんお花がさいてないもんね……」

「じゃあ、来年の今頃にはお花が咲くように何か育ててみようか!」


 職員の一言で、子どもたちはそれこそ花の咲いたような笑顔を浮かべる。


「さんせー!」

「せんせい! なんのお花そだてるの?」

「うーんとキレイなやつがいいよね!」


 みんなの盛り上がりをよそに、職員は気まずそうな表情を浮かべる。


「う~ん……。先生、あんまりお花には詳しくないんだ。今度調べておくね」

「「「えー!」」」


 子どもたちは、不満そうな声をあげた。

 彼女たちは今、花の話がしたいのだ。

 ここで大和が、理玖の存在に気付く。

 彼は理玖の所まで行くと、服の裾を掴み花壇を指差した。

 こっちに来てほしいという意思表示のようだ。

 大和が理玖を連れて花壇の前につくと、皆が理玖のことを認識した。


「あ、りくにい! りくにいならお花のおはなしたくさんできるよ! お花のことならなんでもしってるし、うちのにわのお花もおせわしてるんだもん!」


 美海の言葉をきっかけに、少女たちの視線が理玖に集まった。


「ほんとに!? キレイなおにいちゃん!」

「ふゆでもさくお花のことおしえて!」

「綺麗なお兄ちゃんって……」


 理玖は不服そうだったが、キラキラと輝く表情に気圧されたようだ。

 重い口を静かに開くと、ぽつりぽつりと話し始める。


「……こういう場所で育てるなら、パンジーなんていいんじゃないの。色もたくさんあるし、ガーデニング初心者でも育てやすいくらい丈夫だから。十月くらいに苗を買ってきて植え付ければ、冬の間も花を楽しむことができるよ」


「パンジーってはるのお花だとおもってた!」

「わたしも! ふゆにいろんないろのパンジーがさいたらきれいだろうね!」

「せんせい、メモできた!?」

「バッチリだよ!」


 職員も、理玖の話を聞いてたらしい。

 ペンを片手に、メモを取っている。


「すみません。他にも、育てるためのコツがあったら教えてもらえますか?」

「……水をあげる時は、気温の低い早朝や夕方は避けてください。土が凍るから」

「なるほど!」

「……他にも、育ちやすい土とか肥料のこととか色々あるけど、予算の問題もあると思うから後は自分で調べてください」

「ありがとうございます! みんな、後でちゃんと調べておくね! 来年の今頃には、綺麗なパンジーのお花を咲かせられるように頑張ろう!」

「「「おー!!」」」

 どうやら、話は纏まったようだ。


「……行こう」


 大和と美海を促し、理玖はその場を離れようとする。


「キレイなおにいちゃん、おしえてくれてありがとう!」

「わたしたちちゃんとおせわするから、お花がさいたら見にきてね!」

「……わかった。頑張って。……行こう」

「うん! みんな、ばいばーい!」

「みうちゃん、やまとくん、ばいばい!」

「またあしたねー!」


 理玖は、今度こそ二人を連れて庭を後にした。

 少女たちが、花に興味を示してくれたからだろうか。

 帰り道の理玖の表情は、いつもよりも少しだけ嬉しそうに映ったのだった。

 春原理玖がお迎えに行ったら――――植物博士!+綺麗なお兄さん☆

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