表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
透く花の色は  作者: 白鈴 すい
第六話 ヒルガオが見た兄弟のかたち
60/780

兄として、人として

「……彼女、どうしたの」


 案の定、理玖はすぐにやって来た。

 急にコースを離れていった蒼一朗の様子が気になり、既に近くまで来ていたようだ。

 他の皆も一緒である。


「急に倒れたんだ! 声をかけてみたけど意識はねぇ! 体がすごく熱い……!!」

「救急車は先程呼んだので、もうすぐ来ると思います。それまでの間に、何かできることはありませんか?」

「……恐らく熱射病だろう。もう救急車を呼んであるなら、救護室に運ぶのは無駄足になってしまうね。誰か、タオルを濡らしてきてくれないか。持っているタオル、全部使っていいから。君には、彼女の身元を調べてほしい。家族がいるようなら、病院に来てもらうように連絡して」


 理玖は、皆にてきぱきと指示を出していく。


「……救急車には、僕が一緒に乗る」

「俺も……!」

「……柏木くん、待って」


 “一緒に行く”と言いかけた蒼一朗の肩に、恵輔が手を置く。

 促された方向を見ると、そこには青ざめた表情をしている大和の姿があった。

 その隣には、恵輔のコースアウトを不審に思いこの場に駆けつけていた隼輔もいる。

 彼の顔色もまた、大和同様に優れないものだった。

 目の前で人が意識を失っているのだから、幼い二人が動揺するのも無理はない。


「僕たちがするのは、救急車に同乗することじゃないんじゃないかな」

「……そうっすね。俺はここに残る。救急車には誰か別の奴が乗ってくれねえか」


 先程言おうとした言葉を飲み込み、蒼一朗はそう言う。


「じゃあ、柊平さんお願いできる?」

「かしこまりました」


 こうして、救急車には理玖と柊平が乗ることが決まった。

 蒼一朗と恵輔は各々の弟のもとに駆け寄ると優しい言葉をかける。


「兄ちゃん!! ばあちゃん死なないよな!?」

「大丈夫だよ、隼輔。すぐに救急車も来る。ちゃんと助かるさ」


「大和、安心しろよ。絶対に助かる。兄ちゃんが嘘ついたことなんてないだろ?」

「………………………………」


 大和はこくりと頷く。

 信頼する兄が近くで励ましてくれたことによって、二人の顔色は徐々に回復していった。

 数分後に救急車も無事に到着し、老婆は病院に搬送されたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ