ママたちのアイドル☆
③久保寺柊平の場合
「……すまない。仕事が長引いて、来るのが少し遅くなってしまった」
「しゅうにい! ぜんぜんまってないよ! すぐにじゅんびしてくるね!」
「ああ」
大和と美海は帰る準備をするため、玄関から離れていく。
柊平がその場で二人を待っていると、他の児童の母親がやって来た。
どうやら彼女も、子どもの迎えのようだ。
「こんにちは。ここのクラブ、こんなに若いお父さんがいたのね~」
「……初めまして。いえ、私は父親ではなく、同僚の弟妹を迎えに来ただけです」
「まあ、そうだったの。どおりで若いはずだわ~」
「……はい」
「どの子のお迎え?」
「柏木大和と、椎名美海です」
「大和くんと美海ちゃんね。うちの子はね……」
世間話をしていると、帰る準備を終えた大和と美海がやって来た。
「大和くん、美海ちゃん、さようなら!」
「さようならー!」
美海は元気に職員に挨拶をし、大和も声を出せない分大きく手を振る。
「……それでは、失礼します」
柊平は話していた母親と職員に会釈をすると、二人を連れて出ていった。
少し遅れて、別の母親がクラブに入ってくる。
「今、すごく若いお父さんとすれ違ったんだけど……」
「ああ。お父さんじゃないわよ。同僚の弟妹の迎えって言ってたもの」
「いいなあ。話したの?」
「ええ。お迎えのタイミングが一緒だったから、少しね。だって彼……」
「「とっても素敵だものね!!」」
母親たちは、まるで少女のように楽しそうに話し始めた。
お互いの子ども達がやって来るまで、柊平に関する話は続いたのだった。
久保寺柊平がお迎えに行ったら――――ママたちのアイドル☆