ライバル宣言されちゃった!
②緒方颯の場合
「大和くん、美海ちゃん、待ったか!? 帰ろうぜ!」
「はやてにい!」
「はやてにいって、いつもみうちゃんのかみの毛やってくれる人?」
美海の友達が、彼女に声をかける。
「うん! そうだよ! 今日のおだんごも、はやてにいがやってくれたんだ!」
「おだんごがみつあみになっててすごい!」
「みう、はやてにいのことだいすき!」
「………………………………!!」
いつも颯に髪を切ってもらっている大和も、こくこくと頷いた。
「ありがとな! 俺も、大和くんと美海ちゃんのこと大好きだぜ! ん……?」
颯はここで、誰かに見られているような気がした。
視線を感じた方向を向くと、そこには自分を鋭い眼で睨みつける隼輔がいた。
「……みう! お前、そんなにそいつのことすきなのか!?」
隼輔が、大股でこっちにやって来る。
「うん! だいすきだよ! やさしいし、いつもあそんでくれるし、かみの毛もやってくれるし! あ、今日きてるこのふくも、はやてにいといっしょにえらんだやつなんだよ! はやてにいはとってもオシャレなの!」
「ぐ……!」
美海は純粋な笑顔で、隼輔の心を抉っていく。
「しゅんすけくん、どうしたの? どこかいたいの?」
黙り込んでしまった隼輔に、美海は優しく声をかけた。
「おれとおまえは今日からライバルだ! ぜっっったいにまけないからな!!」
隼輔は颯を指差しながらそう言い放つと、走り去ってしまう。
「しゅんすけくん、きゅうにどうしたんだろう?」
「ほんとだな! ライバルって言ってたけど、なんのことだ?」
鈍い二人には、隼輔の真意は伝わらなかったようだ。
(しゅんすけくん、がんばって……! ぼく、おうえんしてるよ……!)
そんな二人の姿を見ながら、大和は隼輔に心の中でエールを送った。
緒方颯がお迎えに行ったら――――ライバル宣言されちゃった!