とろけるように幸せな夢を見よう
「うおー! 心! よく帰ってきたな!」
「……怪我はしてないみたいだね」
「ご飯はちゃんと食べていましたか? おじやを用意してありますよ」
「美海のことなら心配しなくても平気だぜ。お前は部活の合宿で、明日帰ってくるってことになってるからな。もう夜も遅いから、今日はもう寝てるんだ」
「……少し落ち着いたらどうだ。結城が困っているだろう」
「透花さんから連絡があって、一番ソワソワしてたのは久保寺さんでしたよね」
「そーそー! 二人を外で出迎えようってさ☆」
(シン! 無事か!? あいつらに何もされなかったか!?)
みんな、なんで外で待っててくれたの……?
夜だし、こんなに寒いのに……。
ぱかおなんて、まだ包帯でぐるぐる巻きになってる……。
自慢の毛も燃えちゃって、体中痛いはずなのに……。
声が出ない僕の背中を、透花さんが優しく撫でてくれる。
「みんな、とても心配していたんだよ。心くんは怪我をしていないかな。ご飯をちゃんと食べているかな。酷い目に遭っていないかな。早く帰ってきて欲しいなって」
「………………………………!!」
みんながこんな風に優しいから、僕はこの家が好きなんだ……。
ちょっとでもみんなのことを疑っちゃったことが恥ずかしいや……。
「どうした!? やっぱり、どこか痛いのか!?」
「……念のため診察しておこうか」
「お、おじやじゃなくて雑炊の方がよかったですかね?」
「いや、ハル。どっちもそんなに変わんねーから」
「……とにかく、屋敷の中に入ろう」
「そうですね。いつまでもここにいても仕方ありませんし」
「さむ~い! みんなで、なんかあったかいものでも飲もうよ~♪」
(オレ、シンのこと守れなかった……! もっと強くなるために、明日からトレーニングするから付き合ってくれよ! あと、毛は気合いで生えてくるから心配すんな!)
みんな、ありがとう……。
……僕、みんなのことが大好きだよ。
「……ありがとう。ただいま……!」
僕は、ありったけの感謝の気持ちを込めて言う。
それに、みんなは当たり前のように返してくれる。
「「「「「「「「(おかえり)」」」」」」」」
……遠い家族と、近い家族。
どちらも、僕にとって大切な存在だ。
……明日は、お母さんに手紙を書こう。
お父さんは、何も変わってなかったよって。
……あと、美海にお父さんの話をしてあげるんだ。
さすがにここ数日の話はできないから、昔の話になっちゃうけど……。
今までこの話は避けてきたから、きっと、喜んでくれるよね……?
いつか、お父さんとお母さんと僕と美海で、会えたらいいな。
……そこにみんなもいてくれたら、もっといい。
そんな日が来ることを夢見ながら、僕は家の門をくぐったんだ――――――――――。