表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
透く花の色は  作者: 白鈴 すい
第四十五話
595/780

とろけるように幸せな夢を見よう

「うおー! 心! よく帰ってきたな!」

「……怪我はしてないみたいだね」

「ご飯はちゃんと食べていましたか? おじやを用意してありますよ」

「美海のことなら心配しなくても平気だぜ。お前は部活の合宿で、明日帰ってくるってことになってるからな。もう夜も遅いから、今日はもう寝てるんだ」

「……少し落ち着いたらどうだ。結城が困っているだろう」

「透花さんから連絡があって、一番ソワソワしてたのは久保寺さんでしたよね」

「そーそー! 二人を外で出迎えようってさ☆」

(シン! 無事か!? あいつらに何もされなかったか!?)


 みんな、なんで外で待っててくれたの……?

 夜だし、こんなに寒いのに……。

 ぱかおなんて、まだ包帯でぐるぐる巻きになってる……。

 自慢の毛も燃えちゃって、体中痛いはずなのに……。

 声が出ない僕の背中を、透花さんが優しく撫でてくれる。


「みんな、とても心配していたんだよ。心くんは怪我をしていないかな。ご飯をちゃんと食べているかな。酷い目に遭っていないかな。早く帰ってきて欲しいなって」

「………………………………!!」


 みんながこんな風に優しいから、僕はこの家が好きなんだ……。

 ちょっとでもみんなのことを疑っちゃったことが恥ずかしいや……。


「どうした!? やっぱり、どこか痛いのか!?」

「……念のため診察しておこうか」

「お、おじやじゃなくて雑炊の方がよかったですかね?」

「いや、ハル。どっちもそんなに変わんねーから」

「……とにかく、屋敷の中に入ろう」

「そうですね。いつまでもここにいても仕方ありませんし」

「さむ~い! みんなで、なんかあったかいものでも飲もうよ~♪」

(オレ、シンのこと守れなかった……! もっと強くなるために、明日からトレーニングするから付き合ってくれよ! あと、毛は気合いで生えてくるから心配すんな!)


 みんな、ありがとう……。

 ……僕、みんなのことが大好きだよ。


「……ありがとう。ただいま……!」


 僕は、ありったけの感謝の気持ちを込めて言う。

 それに、みんなは当たり前のように返してくれる。


「「「「「「「「(おかえり)」」」」」」」」


 ……遠い家族と、近い家族。

 どちらも、僕にとって大切な存在だ。

 ……明日は、お母さんに手紙を書こう。

 お父さんは、何も変わってなかったよって。

 ……あと、美海にお父さんの話をしてあげるんだ。

 さすがにここ数日の話はできないから、昔の話になっちゃうけど……。

 今までこの話は避けてきたから、きっと、喜んでくれるよね……?

 いつか、お父さんとお母さんと僕と美海で、会えたらいいな。

 ……そこにみんなもいてくれたら、もっといい。

 そんな日が来ることを夢見ながら、僕は家の門をくぐったんだ――――――――――。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ