ばいばい! またね!!
……とうとう、僕たちが王都に帰る時間になった。
見送りに来てくれたのは、お父さんだけじゃなくて……。
さっきまで透花さんと戦ってた人たちや、リヒトさんもそこにいたんだ。
僕がお父さんと話してる間に、透花さんもみんなと話をしたみたい。
さっきまでの重い空気は、すっかりなくなってたよ。
「一色殿、これからも心のことをよろしくお願いします」
「はい。心くんを悲しませるようなことはしません。あの日、火山に誓いましたから」
「………………………………!! やはり、気付いていたのか……」
「竜王様に会うまでは確信が持てませんでした。でも、お会いしたらすぐにわかりましたよ」
「……あなたのことを信じきれなくて、本当に申し訳なかった」
「いいえ。少し言葉を交わしただけの者を信じられないのは当然です」
透花さんとお父さんが話してるのを、僕は竜化した人の背中に乗って見てた。
この人が、僕たちを人間の領地まで送ってくれるんだって……。
話が終わると、透花さんが僕の隣に座る。
……とうとう、出発の時だ。
僕を乗せた竜の体が、少しずつ浮き上がっていく。
……お父さんの顔が、だんだん小さくなっていくよ。
「……心!」
「……どうしたの?」
「お父さんはいつか、この国を変える! もっと、他国、他人種との交流が盛んな国にしてみせる! そうしたら、今度はお母さんと美海を連れて一緒に来てくれ……! お父さんが育った、愛するこの国を、二人にも見てほしいんだ!!」
「……わかった! お父さん、約束だよ!!」
「ああ! 男と男の約束だ!!」
最後の方は、距離が離れて二人とも大声になってた。
「お父さん、ばいばい! またね!!」
僕は、大きく手を振る。
声は届いてないかもしれないけど、これなら見えるよね……?
お父さんも、僕に手を振ってくれたような気がする。
こうして僕は、透花さんと一緒に帰ることになったんだ。
幸せがたくさん詰まった、あの家に――――――――――。