離れていても、僕たちは家族だ。
「……すっかり、日が暮れてしまったな」
「……うん。お父さん、僕、そろそろ帰らないと……」
「……ああ」
お父さんと話してる内に、あっという間に夜になってた。
そろそろ帰って、透花さんの怪我を理玖さんに診てもらわなきゃ……。
「……心」
「なに……?」
「……お前たちがあの村で迫害を受けていることに、お父さんは気付いていたんだ」
「……なんで?」
「あの村には火山があっただろう? ……マグマがな、教えてくれるんだよ」
「お父さんは、マグマと話ができるの……?」
「……ああ。お父さんのお父さんも、そのお父さんもそうだった。竜人の国の王になると、マグマと会話をし、それらを操ることが出来るようになる」
もしかして、あの火山が爆発しそうになってたのって……。
「お父さん、怒ってたの……?」
「当たり前だ……! 大切な家族が酷い目に遭わされているというのに、国から出ることすら許されない……! お前たちを、守ることすら出来ないんだから……!」
「……そうだったんだ」
だから、僕が火あぶりにされそうな時に今にも噴火しそうだったんだ……。
遠くにいても、お父さんはちゃんと僕たちのことを見ていてくれたんだね。
「……僕ね、あの時思ったんだよ。お父さん、助けてって」
「………………………………!!」
「助けてくれたのは透花さんだったけど、僕の声、ちゃんとお父さんに届いてたんだね」
「心……!!」
お父さんが、すごい力で僕のことを抱き締める。
「お父さん、痛い……」
「……一色殿がお前を救ってくれなければ、私は怒りに任せてマグマをあの村に解き放っていただろう。……それは、大切な家族をも飲み込んでしまったはずだ」
「……うん。透花さんは、いつでも、みんなを助けてくれるすごい人なんだよ」
「……ああ。お前は、すごいお人のところで暮らしているんだな」
「……血は繋がってないけど、僕の自慢の家族なんだ」
「……そうか。いい家族を持ったな、心」
そう言ったお父さんの顔は、少し寂しそうだった。
僕が言いたいのは、そういうことじゃなくて……。
「……お父さんも、お母さんも、美海も、大切な家族だからね」
「………………………………!!」
「離れていても、僕はずっとお父さんの子どもで、お父さんはずっと僕のお父さんだよ」
「……ああ、そうだな。どこにいても、お父さんは心のお父さんで、心はお父さんの息子だ」
僕は、お父さんにぎゅっと抱き付く。
(もう、大丈夫……。離れていても、僕たちはちゃんと家族だってわかったから……)
この国に来る時に持っていた、胸が張り裂けそうなほど哀しい感情はもうない。
その代わりに、とてもあったかくてぽかぽかしたものが、僕の胸を満たしてるんだ――――――――――。