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透く花の色は  作者: 白鈴 すい
第四十五話
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離れていても、僕たちは家族だ。

「……すっかり、日が暮れてしまったな」

「……うん。お父さん、僕、そろそろ帰らないと……」

「……ああ」


 お父さんと話してる内に、あっという間に夜になってた。

 そろそろ帰って、透花さんの怪我を理玖さんに診てもらわなきゃ……。


「……心」

「なに……?」

「……お前たちがあの村で迫害を受けていることに、お父さんは気付いていたんだ」

「……なんで?」

「あの村には火山があっただろう? ……マグマがな、教えてくれるんだよ」

「お父さんは、マグマと話ができるの……?」

「……ああ。お父さんのお父さんも、そのお父さんもそうだった。竜人の国の王になると、マグマと会話をし、それらを操ることが出来るようになる」


 もしかして、あの火山が爆発しそうになってたのって……。


「お父さん、怒ってたの……?」

「当たり前だ……! 大切な家族が酷い目に遭わされているというのに、国から出ることすら許されない……! お前たちを、守ることすら出来ないんだから……!」

「……そうだったんだ」


 だから、僕が火あぶりにされそうな時に今にも噴火しそうだったんだ……。

 遠くにいても、お父さんはちゃんと僕たちのことを見ていてくれたんだね。


「……僕ね、あの時思ったんだよ。お父さん、助けてって」

「………………………………!!」

「助けてくれたのは透花さんだったけど、僕の声、ちゃんとお父さんに届いてたんだね」

「心……!!」


 お父さんが、すごい力で僕のことを抱き締める。


「お父さん、痛い……」

「……一色殿がお前を救ってくれなければ、私は怒りに任せてマグマをあの村に解き放っていただろう。……それは、大切な家族をも飲み込んでしまったはずだ」

「……うん。透花さんは、いつでも、みんなを助けてくれるすごい人なんだよ」

「……ああ。お前は、すごいお人のところで暮らしているんだな」

「……血は繋がってないけど、僕の自慢の家族なんだ」

「……そうか。いい家族を持ったな、心」


 そう言ったお父さんの顔は、少し寂しそうだった。

 僕が言いたいのは、そういうことじゃなくて……。


「……お父さんも、お母さんも、美海も、大切な家族だからね」

「………………………………!!」

「離れていても、僕はずっとお父さんの子どもで、お父さんはずっと僕のお父さんだよ」

「……ああ、そうだな。どこにいても、お父さんは心のお父さんで、心はお父さんの息子だ」


 僕は、お父さんにぎゅっと抱き付く。


(もう、大丈夫……。離れていても、僕たちはちゃんと家族だってわかったから……)


 この国に来る時に持っていた、胸が張り裂けそうなほど哀しい感情はもうない。

 その代わりに、とてもあったかくてぽかぽかしたものが、僕の胸を満たしてるんだ――――――――――。

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