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透く花の色は  作者: 白鈴 すい
第四十五話
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空白の時間を埋めるように

「……だから、僕たちはお母さんと離れて暮らしてるんだよ」

「そう、だったのか……」


 お父さんがいなくなってから、僕たちの生活は辛いものだったこと。

 村の人に殺されそうになったところに透花さんが現れて、助けてもらったこと。

 もっと広い世界を見るために、村を出て王都で暮らし始めたこと。

 ……そして、お母さんは今もあの家でお父さんが帰ってくるのを待ってること。

 僕は、全部を包み隠さずに話した。

 そうしたら、お父さんの目からは涙が流れてたんだ……。


「……お父さん? 泣いてるの……?」

「心っ……! 本当にすまなかった……!!」


 強いお父さんが泣くのなんて、初めて見た……。

 どうすればいいのか、わからないよ……。


「お前には、辛い思いをさせて……!」

「……ううん、いいんだ。だって、今の僕は幸せだから」

「……一色殿が、家族を守ってくれたんだな」

「うん。……今度はお父さんの番だよ。なんで、僕を無理矢理あの家から引き離そうとしたのか教えて。……僕も美海も、あそこでとっても幸せに暮らしてるんだ」

「……それに関しても、謝らなければいけないな。一色殿のことを、誤解していた……」


 お父さんは、なんでこんな強硬手段をとったのかを説明してくれた。

 僕が、透花さんに酷い目に遭わされてるって思ってたなんて……。

 じゃあ、お父さんは僕と美海のために今回のことをしたの……?


(……そっか。よかった)


 ……僕の知ってる、優しいお父さんのままだ。

 そのことは、僕をとても安心させた。


「……よく考えれば、分かることなんだ。私は一色殿と、言葉を交わしたことがある」

「え……?」

「芯が強く、今までに会ったことのない人間だと思った。だからあの時は、引いたんだ」

「あの時って……? いつの話……?」

「だが、ヒトは変わっていくものだ。私は彼女を、そこまで信用できなかった……」


 お父さんは、とても辛そうに呟く。

 ……僕は、透花さんと一緒に王都に帰る。

 次にお父さんに会えるのは、いつかわからない……。

 ……誤解が解けたんなら、少しでも楽しい話がしたいよ。


「……お父さん、僕は大丈夫だから。この話はおしまいにしよう」

「しかしっ……!」

「さっきも言ったけど、僕、今とても幸せなんだよ。毎日が、楽しいこと、おいしいものでいっぱいなんだ。僕は、その話をもっとたくさん聞いてほしいよ」

「………………………………!! ……そうだな。お父さんも、もっと心の話が聞きたい」

「じゃあ、なんの話からしようかな……。あっ、この間学校でね……」


 こうして僕は、お父さんにたくさん話を聞いてもらった。

 おしゃべりは苦手だけど、聞いてほしい話がたくさんあったから……。

 お父さんも、僕にいろいろな話をしてくれたよ。

 空白の六年間を埋めるように、僕たちは何時間も語り合ったんだ――――――――――。

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