みんなが僕を、幸せ者にしてくれたんだ。
「……これが美海だよ。今は、小学一年生。お手伝いもたくさんしてくれるし、勉強も頑張ってて、友達もたくさんいるんだ。すっごくいい子で、自慢の妹だよ」
「そうか。随分大きくなったんだなぁ。……お母さんに似て、とても美人さんだ」
僕とお父さんは、お父さんが僕にくれた部屋に移動した。
二人きりで、僕が持っていた写真を見ながら色々な話をしてる。
「これが、柊平さん。……僕が寝坊しちゃった時は、学校まで車で送ってくれるんだ」
「心は、よく寝坊をするのか?」
「……たまにだよ。部活の朝練がない日だけ……」
「部活に入っているのか」
「……うん、弓道部。体力作りのために、この人、蒼一朗さんと一緒にたまに走りに行くよ。体が大きくてかっこいいから、いつか僕も蒼一朗さんみたいになりたいんだ」
「こんな風になるには、たくさんトレーニングが必要だな」
「……うん。プロテインを飲もうかと思ったんだけど、この二人、晴久さんと理玖さんに止められてるんだ……。晴久さんはみんなのご飯を作ってくれるコックさんで、理玖さんはお医者さん……。ちゃんと栄養を取って、しっかり寝れば、僕には必要ないって……」
「そうだな。もっと大人になれば、背も伸びて体も大きくなるさ」
「……そうかな?」
「ああ。お父さんの息子だからな。絶対に大きくなるよ」
「……うん」
「この小さい子は誰かの弟か? 美海と同じ年齢くらいに見えるが」
「……うん、蒼一朗さんの弟の大和くん。とっても優しい子で、美海と同じ学年なんだ。仲良しだから、毎日一緒に小学校に行ってるよ」
「……美海は、男ばかりの家で大変じゃないのか?」
「透花さんもいるし、大丈夫だと思うけど……。美海、最近はギターを練習してるんだよ」
「ギターなんてすごいじゃないか!」
「……この人が、美海のギターのお師匠さん。虹太さんっていうんだ。本当はピアニストなんだけど、ギターもとっても上手いんだよ。美海は、毎日すごく楽しそうだから安心して」
「……そうか。心は、この中だと誰と一番仲がいいんだ?」
「……人間だと、この子、颯くん。同じ高校に通ってて、クラスも一緒なんだ。美海も僕も、とってもオシャレな服を着てるでしょ? これ、颯くんが選んでくれるんだよ」
「そうなのか。確かに、今着てる服もとてもかっこいいぞ」
「……ありがと。あと、この子は僕の相棒のぱかお」
「アルジャンアルパガと一緒に暮らしてるなんて、珍しいな」
「……うん。色々あって、一緒に暮らしてるんだ。ぱかおの毛はとってもふわふわで、気持ちいいんだよ。この時期は、毎日抱いて寝てるんだ……」
「アルジャンアルパガと心を通わせるのは、私たち竜人族でも簡単に出来ることじゃない」
「そうなの……?」
「ああ。だから、この縁を大切にしなさい」
「……はい」
「それにしても、ぱかおに怯えているこの青年は……」
「その人は湊人さん。動物が苦手なんだ。でも、ぱかおが悪さをしないっていうのは最近わかってくれたみたい。ふわふわの毛に触ってみたいけど、そうもいかなくて葛藤してる……」
「みんな、愉快な人たちなんだな」
「うん。……僕も含めて、みんな、透花さんに連れられてこの家に来たんだ」
「……そのいきさつを、詳しく聞かせてもらうことは出来るか?」
「……お父さんは知らないよね。僕たちが、どうしてお母さんと離れて暮らしてるのか……」
「……ああ。心にとって、辛い話なのかもしれないが……」
「……大丈夫。話せるよ」
確かに、辛くて、あまり口にしたくはない過去だけど……。
……でも、今の僕はちゃんと話せるよ。
透花さんが、みんなが、僕を幸せ者にしてくれたから。
僕は少しずつ、お父さんがいなくなってからのことを話したんだ――――――――――。