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精一杯の笑顔を返すよ
「心、本当にごめんな……! ちゃんとお前の話を聞いてやれなくて……!」
「……ううん。僕も、昨日の朝はひどいこと言ったから……。ごめんなさい……」
ああ、よかった……。
あったかい、僕の大好きなお父さんだ……。
「……今更かもしれないが、心の話を聞かせてくれないか。学校の話でも、友達の話でも、なんでもいいんだ。……父さんは、お前と話がしたい」
昨日の朝は、お父さんのことが怖くてあんなこと言っちゃったけど……。
……今なら、僕の素直な気持ちを伝えられるよ。
「……うん。僕ね、お父さんに聞いてほしいことがたくさんあるんだ……!」
僕を抱き締めるお父さんの手が、さっきまでよりも強くなる。
抱き合っている僕たちを見ながら、透花さんは優しい笑顔を浮かべてる。
『心くん、よかったね』
声には出てなかったけど、そう言ったのが聞こえたような気がして……。
『ありがとう、透花さん』
そんな想いを込めながら、僕は透花さんに笑顔を返したんだ――――――――――。