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透く花の色は  作者: 白鈴 すい
第四十五話
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あったかい憧れ

「いけません! 王であるあなたが、人間の小娘に頭を下げるなど……!」

「……リヒト、少し黙っていてくれないか。私は、自分の過ちを認めても頭を下げられないほど傲慢ではないんだ。……お前なら、わかってくれるだろう」

「……申し訳ありません。出過ぎた真似を、いたしました……」


 リヒトさんは、お父さんが頭を下げるのをやめさせようとした。

 でも、覚悟を決めたお父さんを止められる人は誰もいないみたいだ。


「一色透花殿、改めて謝罪させてほしい。この度は、本当に申し訳ないことをした」

「いえ、竜王様が謝るようなことは何もないです。先程も言ったように、正当防衛とはいえあなたの仲間を傷付けたことは事実ですから。こちらこそ、申し訳ありませんでした」

「……あなたが何の理由もなしにこのようなことをする人間ではないと、心への態度を見てわかった。……何があったのか、教えてもらえないか?」

「わかりました。では、簡単になってしまいますがご説明させていただきますね」


 透花さんは、ここ数日の間に起こった出来事を話し始めた。

 自分が任務を終えて屋敷に戻ると、仲間たちが傷付き、僕がいなかったこと。

 傷付いた仲間から聞いた話によると、僕のお父さんの遣いの者が来たということ。

 その遣いの者と戦った仲間が、僕を竜人の子だと指し示すヒントをくれたこと。

 竜人についていろいろ調べていたところに、この国の使者たちがやって来たこと。

 その人たちと一緒に国まで来たら、突然竜人たちの襲撃を受けたこと。

 大切なものを守るために、どうしても相手を傷付けなければならなかったこと……。

 お父さんは、透花さんの話を静かに聞いてた。


「……やはり、私が思っていたような人物ではないんだな」


 お父さんがぽつりと何か言った気がしたけど、それを聞き取ることは出来なかった。


「私はあなたのことを誤解していたようだ。謝って許されるようなことではないが、何度でも言わせてほしい。本当に、申し訳ないことをした……!」

「竜王様、その言葉は私ではなく心くんにかけてあげてください」


 急に名前を出されたことにびっくりしてると、二人の視線が僕に向く。


「心くんは、ここ数日で色々と辛い思いをしたと思います。……私は、こんなにやつれている心くんを始めて見ました。ちゃんとご飯は食べた?」

「……食べてない。お腹は空いてるのに、どうしても食べる気になれなかったから……」

「……うん。夜は眠れた?」

「……寝たけど、いつもみたいによくは眠れなかったよ」

「心……! 本当にすまなかった……!!」


 僕の体が、あったかくておっきなものに包まれる。

 透花さんとは全然違う、ごつごつしてて頼もしい感触。

 ……うん、僕はこれを知ってるよ。

 だってこれは、僕が昔からずっと憧れていたものだから……。


「お父さん……」


 僕の体は、お父さんに抱き締められていた。

 この国に来た時、お父さんの背中が小さくなったように感じたけど……。


(……違う、お父さんが小さくなったんじゃない。僕が、大きくなったんだ……)


 そんなことを考えながら、僕は自分の腕をお父さんの背中に回した――――――――――。

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