この優しい手は、いつでも僕を引き戻してくれるんだ。
「……心、そこをどくんだ」
「いやだ……!」
「……その女のやったことは、国王として見過ごせない」
「お父さんは、透花さんのことなんにも知らないくせに……! 僕の気持ちも……!!」
「心……」
「僕は絶対にここをどかない……! 僕が邪魔なら、ころ……!」
「殺せばいいじゃないか」と言おうとしたところで、僕の口が何かに覆われた。
優しくてあったかくて、ふわふわしてるこれは、透花さんの手だ……。
「……心くん、その先は言っちゃダメだよ。その言葉は、心くんも、お父さんも傷付ける」
「……ん、ごめんなさい」
「ううん。心くんがそんな言葉を言いたくなるほど、追い詰められていることはわかったよ」
透花さんはそう言うと、僕の後ろから出てお父さんの前に立った。
「透花さん……!」
「大丈夫だよ、心くん。私に任せて」
お父さんは、今にも攻撃しそうなのに……。
いったい、どうするっていうの……?
「心くんのお父様、はじめまして。私は一色透花という者です。王都にて心くんと一緒に暮らしています。ご挨拶が遅くなってしまい、申し訳ございません」
「そんなことはどうでもいい……! 貴様が、私の部下たちをやったのか……!?」
「はい。自分の身を守るためだったとはいえ、これらは私がやったことです」
「いけしゃあしゃあと……! この小娘が……!!」
お父さんの大きな爪が、透花さんに襲いかかる。
僕は目を瞑って、ぎゅっと透花さんの背中にしがみつくことしかできなかった……。