その戦いを止めたのは
「……そんなこと、私が許すはずがないでしょう」
そう言ったリヒトさんが竜になったのと、大きな火の玉が飛んできたのはほぼ同時だった。
透花さんはさっきと同じように、火の玉を弾き返す。
「あなたの許可なんていらない。心くんが帰りたいと言っているなら、そうするだけだよ」
「……シン様はこの国にとって重要な方なのです。ここから帰すわけにはいきません」
「私にとっても、心くんは大切なの。……お互いに譲れないなら、戦うしかないね」
透花さんは僕の肩を抱くと、ふわりと建物の端まで飛んだ。
僕の体は、まるで羽が生えたみたいに軽くて……。
「心くん、少しここで待っていてね。あの人たちは心くんのことが大切だから、故意に傷付けることはないと思う。私は、あの人と話をつけなければならない」
「……大丈夫? 透花さん、怪我してるのに……」
「うん、平気だよ。こんな怪我、理玖に診てもらったらすぐに治るよ」
「じゃあ、早く帰らなきゃだ……」
僕の言葉に、透花さんはにこりと微笑んだ。
そして僕から離れると、たくさんの竜たちと向かい合った。
「最期の挨拶は終わりましたか?」
「なんのこと? あなた、私がここで死ぬとでも思っているみたいだね」
「そうです。あなたはここで死ぬ。シン様には、これからもこの国で暮らしていただきます」
「……それ、前提から間違っているよ。私は死なない……!!」
透花さんとリヒトさんたちの戦いが再開した。
でも、透花さんの動きがさっきまでとは違う……。
さっきよりもすごく速くて、好戦的っていうのかな……?
透花さんが通った後に、次々と竜が倒れていく……。
動きが速すぎて、何をしてるのかは見えないけど……。
……でも、動きが違うのは透花さんだけじゃない。
竜たちも、リヒトさんの指示で連携して透花さんに攻撃を当てようとする。
その攻撃は、透花さんに当たりこそしないけどすごい破壊力みたいだ……。
建物の壁が、どんどん壊されていく……。
戦いは五分五分で、この戦いは永遠に続くんじゃないかって思えた。
でも……。
「何をしてる……!? これは一体、どういうことだ……!?」
突然やって来たお父さんの一言で、あっという間に戦いは終わったんだ……。