一緒に帰ろう
……でも、何十秒待って火の玉が僕に当たることはなかった。
不思議に思って目を開けると、そこには……。
「くっ……!」
華奢な体で、大きな火の玉を受け止める透花さんがいたんだ……。
透花さんが跳ね返した火の玉は、壁に向かって飛んでいく……。
なんで、そんなことができるかなんてわからないよ……。
でも……!
「透花さん……!」
透花さんが、僕を庇って火傷をしたってことはわかる……!
僕は急いで駆け寄ると、怪我の具合を確認した。
「腕が、真っ赤に……!」
着てた服は燃えて、透花さんの白い腕が真っ赤になってる……。
僕の、せいだ……。
僕の……!!
「心くん、怪我はない?」
僕のせいで火傷したのに、なんでいつもと同じように笑いかけてくれるの……?
痛くて、熱くて、たまらないはずなのに……!
僕は透花さんからの問い掛けに、こくりと頷くことしかできない。
「よかった。私なら大丈夫だよ。心くんほどじゃないけど、怪我の治りは早い方だから」
「すぐに冷やして、お医者さんに見せないと……! 痕が残っちゃう……!」
「そうだね。その前に、一つだけ聞いてもいいかな」
「なに……?」
「心くんは、自分の意思でここに来たの?」
……僕はその質問に、答えることができなかった。
ここに来ることを決めたのは、確かに僕だから……。
でも、そうしたかったからじゃない……。
そうしなきゃ、みんなが酷い目に遭うと思ったから……!
「質問を変えるね。心くんは、これからもここにいたい? うちに帰りたくはない?」
……この質問には、考えるまでもなくはっきりと答えることができるよ。
「帰りたい……! みんなが待ってるあの家に、僕は帰りたいよ……!」
「じゃあ、一緒に帰ろう。迎えに来たよ、心くん」
「うん……! うん……!!」
僕の目からは、いつの間にか涙がぽろぽろと零れてた。
この国に来てからは、気持ちが休まる時間がなかったから……。
透花さんの笑顔を見ると、こんな状況でも安心しちゃうなんて不思議だよね。
透花さんは痛いはずの手で、優しく僕の涙を拭ってくれる。
その温かさを感じたら、僕の涙は止まらなくなっちゃったんだ……。