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透く花の色は  作者: 白鈴 すい
第四十五話
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最後に見えたのが、あなたの顔でよかった。

 僕が部屋でぼーっとしてると、急にお城の中の空気が変わった。


(この、優しくてあったかい空気は……。僕は、この人を知ってる……!)


 ……間違えるはずがない。

 これは、僕が安心して眠るために必要なもの。


(透花さんが、ここに来てる……!)


 なんで、この国に来たんだろう……?

 透花さんに会って、僕はどうするんだろう……?

 いろんな考えが頭を過ぎったけど、今はそんなことどうでもいい……!


(行かないと……!)


 透花さんに会うために、僕は部屋を飛び出した。

 部屋の外には、特に見張りの人はいなかった。

 僕はお城の中を、他の人に見つからないように移動していく。


(今日は、一昨日よりも人が少ない……?)


 そのせいか、誰にも見つからずに歩くことができたんだ。

 透花さんの気配がする建物に近付いていくと、少しずつ空気が変わっていく。


(透花さん、怒ってる……?)


 ……優しくて、あったかいだけじゃない。

 透花さんの怒りで震える大気が、建物の外にいる僕まで伝わってくる。

 ……でも、不思議だよね。

 僕にとっては、全然怖い空気じゃないんだ。

 僕が闘技場みたいな建物の中に入ると、そこでは透花さんが戦ってた。

 リヒトさんみたいなドラゴンを、何十匹も相手にして……。

 透花さんは攻撃をひらりひらりと避け、仲間同士を衝突させている。

 すごい勢いでぶつかった竜たちは、すぐに立ち上がることができないみたい……。

 なかなか攻撃が当たらないことにイライラした一匹の竜が、たくさんの火の玉を吐く。

 それは、透花さんを狙ってというよりも、無差別な感じだ……。


「あ……」


 一つの火の玉が、僕に向かってくる。

 その瞬間、驚いた表情の透花さんと目が合ったんだ。

 透花さんはこの時に初めて、僕がここにいることに気付いたみたい。


「心くん、避けて…!」


 ごめん、透花さん……。

 足がすくんじゃって、僕、避けられないみたい……。

 でも、最後に透花さんの顔が見れてよかった……。


「来てくれて、ありがとう……」


 僕はそう言うと少しだけ笑って、静かに目を閉じた――――――――――。

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