大気を震わせるほどの
四人の男に連れられ透花がヴォルカンの城に到着した瞬間に、城内の空気が変わった。
多くの者たちが、気付いたことだろう。
何か”異質”なものが、この城に舞い降りたことに――――――――――。
「……ここだ」
男たちに案内され、城内の敷地にある闘技場のような建物に入る。
するとそこには、リヒトと二十人ほどの竜人の男たちが待ち構えていた。
何が何でも、ここで透花を始末する気のようだ。
リヒトは、透花を連れて来た男たちの人数を見て驚く。
二人は王都に残るように指示したにも関わらず、そこには四人が揃っていたからだ。
(……些末なことです。王に気付かれる前に殺してしまえば、何の問題もないのだから)
リヒトは一度目を閉じてから、透花を見る。
そこにいる彼女の表情からは、なんの感情も読み取れなかった。
「あなたがリヒトさん?」
「はい」
「……そう。私をここに呼んだのもあなた?」
「そうです。あなたにはここで死んでもらわなければなりません」
「……私には、あなたがどうしてこのようなことをしたのかはなんとなくしか分からない。あなたの大切なもののために動いた結果が、これなんだろうね。でもそれは、私の大切な心くんを苦しませているの。だから、見過ごすわけにはいかない」
「そうでしょうか? シン様も、御父君と一緒に暮らせることになって喜んでいますよ」
「それは、心くんに会って直接聞くよ」
「……そんなことを、私が許すはずないでしょう。あなたはここで死ぬのです」
「大切なものを守るためなら、私は戦う。……でも、誰かを傷付けることは好きではないの。一度だけ言う。そこを、どきなさい」
そう言った瞬間、闘技場の柱や壁にヒビが入った。
透花の怒りで、大気が震えているのだ。
だが、こんなことで怯むようなリヒトではない。
「ご安心を。血を流すのはあなただけです。……やってしまいなさい!!」
リヒトの合図で、竜に変身した男たちが一斉に透花に襲いかかる。
こうして、透花と二十匹を超える竜との戦いが始まったのだった――――――――――。