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その瞳に映ったもの
最後の女性走者が、コーナーを回ってくる。
白組、赤組の順に続いていて、他の組は少し離れた位置にいる。
蒼一朗と恵輔の一騎打ちというわけだ。
バトンの受け渡しは、白組が先に行われた。
そのまま走り出した蒼一朗を、少し遅れてバトンを受け取った恵輔が追いかける。
差はあっという間になくなり、二人は横並びとなった。
(やっぱり部長、はえぇ……!)
(負けないよ、柏木くん……!)
白組と赤組の応援席からは、大きな歓声が上がっていた。
(あれは……!)
しかし、ゴールまであと数十メートルというところで、蒼一朗の視界にあるものが映る。
「……部長、わりぃ! また今度勝負してくれ!」
恵輔に一言詫びを入れると、そのままコースを外れていく。
「ちょっと柏木くん、どこ行くの……!?」
蒼一朗を追いかけるようにして、恵輔もコースアウトしてしまった。
その行動に、周囲はざわく。
一位でゴールテープを切ったのは、二人の遥か後方を走っていた黄組のアンカーだった――――――――――。