せめて夢だけでも
「シン様、こちらお食事になります」
「………………………………」
夜になると、リヒトさんが僕にご飯を持ってきてくれた。
テーブルにそれを置くと、そのまま部屋を出て行く。
湯気を立てているご飯を、僕はぼんやりと見ていた。
……お腹は空いてるけど、食べる気がしないんだ。
(……晴久さんの作ったぜんざい、食べたかったな)
何もすることがないから、どうしてもみんなのことを思い出してしまう。
(柊平さんに蒼一朗さん、理玖さんも大丈夫だったよね……? ぱかおも、ちゃんと生きてるってリヒトさん言ってたし……。虹太さんと湊人さん、大和くんは、急に僕がいなくなってびっくりしたかな……? そういえば、颯くんに現国のノート貸したままだったっけ……。透花さんに、ちゃんと挨拶できなかったのは心残りだけど……。あの人なら、美海のことを絶対に守ってくれる。よろしく、お願いします……)
僕は、ポケットから封筒を取り出した。
その中に入っている写真を見ながら、今までの楽しかった思い出を振り返る。
(ほんとは、こんな所にいたくない……。あの家に、帰りたいよ……。でも、僕にできるのはこれくらいしかないから……。嫌でも、ここで頑張っていかないと……)
僕はそのまま、床に横になった。
この写真を持って寝れば、みんなの夢が見られないかな……?
そんなことを考えながら、目を閉じるんだ……。