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透く花の色は  作者: 白鈴 すい
第四十五話
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ああ、届かない

「今日から、ここが心の部屋だぞ」

「………………………………」


 お父さんが案内してくれたのは、とても立派な部屋だった。

 ベッドも豪華だし、高そうな壷とかがたくさん置いてある……。

 お父さんが王様で、僕が王子っていうのはほんとなんだ……。

 ……でも僕には、こんなに広いベッドなんて必要ない。

 美海と、ぱかおと、仲良く三人で眠れるスペースがあればいいんだ。

 それに、壷の良さなんてわからないし……。

 ……透花さんがくれたハンモックの方が、僕にとっては何倍も価値のある物だよ。


「……心配しなくても大丈夫だ。すぐに美海も連れてくる」

「……やめてよ! 僕がいればいいでしょ!? 僕がちゃんとするから……!」


 何を勘違いしたのか、お父さんは僕にこんなことを言った。

 美海は、絶対に僕が守るんだ……!

 大きな声で訴える僕を、お父さんはやっぱり不思議そうな顔で見てる。


「心、本当にどうしたんだ? あんな場所に美海だけを残してきて、不安じゃないのか?」

「あんな場所って、なに……? あの家のことなんにも知らないのに、勝手なこと言わないでよ……! あそこには、幸せがたくさんつまってるんだ……!」

「シン様は、あの女から 洗脳を受けているようです。ですから、このようなことを仰るのでしょう。医者に診せて、洗脳を解かなければなりません」

「……そのようだな。心、お前はここにいなさい。必ず、お前を正常に戻してやるから。美海も、すぐにこの国に連れてこよう。お前が心配することは、何もないんだ」

「王よ。そろそろ行かないと、会議に遅れるのではないでしょうか」

「……ああ。心、また夜に来るから。ここで大人しくしているんだぞ」

「待ってよ……! 僕は洗脳なんてされてない……! 話を聞いて……!」


 僕の言葉に耳を貸さずに、お父さんはリヒトさんと一緒に部屋を出て行ってしまう。

 なんで、こんなことになっちゃったの……?

 リヒトさんの話は聞くのに、どうして僕の声は聞いてくれないの……?

 絶望に突き落とされた僕は、目の前が真っ暗になっていくのを感じた……。

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