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透く花の色は  作者: 白鈴 すい
第四十四話
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言葉は伝わらなくても

 心が屋敷を去ってから二日が経ったが、透花は未だに何の手掛かりも掴めずにいた。

 湊人の手を駆使しても、一片の情報すら出てこないのだ。


「こんなに情報が出てこないなんて……。その人、ほんとに人間なの?」


 しまいには、このように言われてしまう始末である。

 透花はこの日、ぱかおが眠っている心の部屋を訪れていた。

 一命を取り留めたものの、意識が戻っていないのだ。


(……なんて、無力なんだろう。心くんにも、美海ちゃんにも、何もしてあげられない)


 悔しさから、無意識の内に手を強く握ってしまう。

 いつの間にか、掌には血が滲んでいた。

 それを、温かく柔らかなものが拭ってくれる。


「ぱかお……。目が覚めたの?」


 傷付いた彼女の手を、ぱかおの舌がゆっくりと舐めていたのだ。

 自分の方が傷だらけなのに、透花の傷を懸命に癒そうとしている。


「……ぱかお、ありがとう。私なら大丈夫だから、ゆっくり休んで……」


 ぱかおを再び寝かしつけようと、透花は背中をゆっくりと撫でる。

 だがぱかおは、瞼を閉じずにじっと透花のことを見つめていた。

 その瞳は、一生懸命に透花に話しかけているのだ。


「……私に、何か伝えたいことがあるんだね」


 ぱかおの視線が透花から外され、部屋の一角に向けられる。

 そこには、湊人と勝負する時に使用する将棋盤が置いてあった。


「将棋盤を持ってきて欲しいの? 少し待っていて。すぐに持ってくるから」


 透花が将棋盤と駒を持って戻ると、ぱかおはよろよろと立ち上がった。

 駒台の中に顔を突っ込み、何かを探しているようだ。

 しばらくして、目当ての駒を見つけたぱかおはそれを口に銜え透花に見せる。


「これは……」


 ぱかおが取り出したのは、飛車の駒だった――――――――――。

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