そこには、信じがたい光景が
玄関の扉を開けた透花は、自分の目を疑った。
大切な家族が四人も倒れ、そのすぐ横で晴久が泣いているのだ。
「ハルくん……」
「と、透花さん! おかえりなさい……!!」
透花は晴久に駆け寄ると、彼の背中をゆっくりと擦る。
晴久を落ち着かせながら、美海、柊平、蒼一朗、そして理玖の状態を確認した。
美海と柊平、蒼一朗は気絶しているが目立った外傷はない。
理玖に至っては、眠っているだけのようだった。
「ハルくん、何があったのか説明できる?」
「美海ちゃんがお友達を連れてくるって言うから、心くんと理玖さんと一緒におやつを作ってたんです……! 呼び鈴が鳴ったから、心くんが迎えに行ったんですけど全然戻ってこなくて……。様子を見に行った理玖さんが、透花さんに連絡するように僕に言ったんです……。繋がらないことを伝えたら、柊平さんと蒼一朗さんに戻って来るように頼んでって言われて……。二人とはすぐに連絡が取れたので、戻って来てくれるように頼みました。それで、理玖さんは玄関に向かったんですが……。僕には、絶対にリビングから出るなって……」
「……そうだったんだね。ハルくんが無事でよかったよ」
「しばらく待っていても理玖さんも心くんも戻ってこないので、ここまで来ました……。そうしたら、柊平さんと蒼一朗さんと理玖さんは倒れていて、心くんはどこにもいなくて……! 庭の方から大きな音がして、怖くて透花さんに連絡したんです……」
晴久は、自分の身を守る術を持たない。
故に、理玖は彼にリビングから出るなと言ったのだろう。
「ハルくん、一人で大変だったね。もう大丈夫だから、安心して。とりあえず、美海ちゃん、柊平さん、蒼一朗さん、理玖は自室のベッドへ。ぱかおはお風呂場に運ぼう」
「は、はい……! ぱ、ぱかおくん……! その傷は……!!」
晴久は、ここで漸く透花に抱かれているぱかおの存在に気付いたようだ。
すぐ近くのものが目に入らないほどに、気が動転しているのだろう。
「ハルくんには、ぱかおをお願いできるかな。火傷をしているみたいだから、シャワーでたくさん水をかけてあげて。私はその間に、みんなを部屋に運んでおくから」
「はい……! あの、みなさんを運ぶお手伝いができなくてごめんなさい……」
「大丈夫だよ。私、こう見えてとっても力持ちだから。じゃあ、よろしくね」
「わかりました……!」
晴久は透花からぱかおを受け取ると、風呂場に向かって駆け出した。
透花は四人の状況を比較し、まずは蒼一朗を運ぶことにしたようだ。
隊員一重いその体をひょいと持ち上げ、彼の部屋への階段を上っていく。
四人を運び終えた頃には他の隊員たちも帰宅し、一色邸はいつもの落ち着きを少しだけ取り戻したのだった――――――――――。