面影を失った庭が示すのは
任務を終え屋敷に戻った透花の目に映ったのは、痛ましい光景だった。
常に美しく整えられているはずの庭は、その面影を失っている。
所々地面が抉れ、敷き詰められている煉瓦が剥がれた箇所もあった。
(何が起こったの……?)
晴久から連絡を受けた時、透花はそれを取ることが出来なかった。
任務が落ち着いてから折り返すと、晴久の泣き声が聞こえてくるのだ。
「ハルくん、どうしたの?」
「と、透花さん……! あ、あの……!!」
「うん。少しずつ、ゆっくりでいいよ」
「す、すぐに帰ってきてください……!」
ゆっくりでいいと言ったにも関わらず、晴久は状況を説明しなかった。
いや、それすらも出来ない非常事態なのかもしれない。
そう感じた透花は、急いで屋敷まで戻ってきたのだ。
何が起こったかは、まだ分からない。
だが、何かが起こったことは優美さを欠いた庭を見るだけで分かった。
その一角に、よく知る銀色の毛玉が横たわっている。
「ぱかお……!」
ぱかおの体は、傷だらけだった。
一番目立つのは、擦り傷や切り傷ではなく火傷である。
自慢のふわふわの毛も、ほとんどが焼かれてしまっていた。
透花は彼の体に耳を近付け、鼓動を確認する。
――――――――――トクン、トクン。
微かな音であったが、ぱかおの心臓は動いていた。
(よかった、生きている……。早く理玖に診てもらわないと……)
透花はぱかおの体を優しく抱き上げると、玄関へと向かった。
この先にも凄惨な光景が待ち受けていることを、彼女はまだ知らない――――――――――。