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透く花の色は  作者: 白鈴 すい
第四十四話
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面影を失った庭が示すのは

 任務を終え屋敷に戻った透花の目に映ったのは、痛ましい光景だった。

 常に美しく整えられているはずの庭は、その面影を失っている。

 所々地面が抉れ、敷き詰められている煉瓦が剥がれた箇所もあった。


(何が起こったの……?)


 晴久から連絡を受けた時、透花はそれを取ることが出来なかった。

 任務が落ち着いてから折り返すと、晴久の泣き声が聞こえてくるのだ。


「ハルくん、どうしたの?」

「と、透花さん……! あ、あの……!!」

「うん。少しずつ、ゆっくりでいいよ」

「す、すぐに帰ってきてください……!」


 ゆっくりでいいと言ったにも関わらず、晴久は状況を説明しなかった。

 いや、それすらも出来ない非常事態なのかもしれない。

 そう感じた透花は、急いで屋敷まで戻ってきたのだ。

 何が起こったかは、まだ分からない。

 だが、何かが起こったことは優美さを欠いた庭を見るだけで分かった。

 その一角に、よく知る銀色の毛玉が横たわっている。


「ぱかお……!」


 ぱかおの体は、傷だらけだった。

 一番目立つのは、擦り傷や切り傷ではなく火傷である。

 自慢のふわふわの毛も、ほとんどが焼かれてしまっていた。

 透花は彼の体に耳を近付け、鼓動を確認する。

 ――――――――――トクン、トクン。

 微かな音であったが、ぱかおの心臓は動いていた。


(よかった、生きている……。早く理玖に診てもらわないと……)


 透花はぱかおの体を優しく抱き上げると、玄関へと向かった。

 この先にも凄惨な光景が待ち受けていることを、彼女はまだ知らない――――――――――。

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