僕の秘密
「ドラゴン……?」
今、僕の目の前には青くて大きなドラゴンがいる。
さっきまでは、確かに人間だったはずなのに……。
「シン様は、竜人という言葉を聞いたことはございませんか」
「りゅう、じん……?」
「はい。ヒトと竜、どちらの姿もとることが出来る種族です」
「人間と竜、どっちも……」
「これからお連れするあなたのお父様が治める国は、竜人族の国ですよ」
「それじゃあ、お父さんも……?」
「勿論でございます。そしてシン様、あなたにもその血は流れているのです」
「え……?」
「浅黒い肌に、赤の瞳。これが竜人族の特徴です」
「でも、僕はドラゴンになんてなれないよ……」
「あなたには純粋な人間であるお母様の血も混じっているので、変身は出来ないのかもしれません。それか、まだ力に目覚めていないだけでしょう」
「僕は、人間だよ……」
「いいえ。現にシン様は、竜人の証拠とも言える能力お持ちなのですから」
「竜人の、証拠……?」
「はい。シン様は、そこにいる獣の声を聞き、心を通わすことが出来る」
「………………………………」
「我々は全ての生物の上に立つ種族です。故に、あらゆる生き物との会話が可能なのです」
頭を殴られたような衝撃が、僕を襲った。
いろんな動物と話せるのは、僕が人間じゃないから……?
この肌も、目の色も、全部僕が人間じゃない証拠だってこと……?
「さて、あの下等な獣に止めを刺すといたしましょう。先程も申し上げた通り、我々は全ての生物の上に立つ存在です。このような獣に負けるわけがありません」
「待って……! やめて……!! ぱかおも、やめて……! 僕のことは、いいから……!」
(そんなわけにいくか! シンをどこにも連れて行かせたりしない!)
ぱかおの突進を避けたリヒトさんは、その首を鋭い爪で掴んだ。
そして、口から吐いた炎でぱかおの体を焼いていく。
「もう、やめて……。お願いだから、みんなにひどいことしないで……」
僕の意識は、そこでぷつりと途切れたんだ……。