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透く花の色は  作者: 白鈴 すい
第四十四話
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忘れたくないもの

「僕、あなたと一緒に行くよ……。だからもう、みんなのこと傷付けないで……」


 僕の言葉を聞くと、リヒトさんは理玖さんから離れた。

 理玖さんはさっきハンカチを落とされて、眠り薬を吸っちゃったみたいだ……。

 朦朧とした意識の中で、必死に僕に呼びかけてくれる。


「彼女の許可なしに、ここを離れるなんて許されるわけがないだろう……!」

「……うん。透花さんには、理玖さんから謝っておいて。あと、今までありがとうって……」

「……そんなこと、僕の口からは絶対に言わない。どうしても言いたければ、自分で……」


 理玖さんはそう言うと、意識を失ってしまった。

 ……今、この場で立っていられるのはリヒトさんと僕だけだ。


「さすがシン様、賢明な判断です。それでは参りましょうか」

「……待って。どうしても、二人じゃなきゃダメなの……? 美海はここに……」

「シン様が来てくださるのなら、ミウ様にはここに残っていただいて構いません。ミウ様に近付いたのも、シン様を円滑に我が国にお連れするためでしたから。私の目的は、我が王の正統なる後継者であるシン様、あなたでございます。王の血が薄いミウ様は、はっきり言ってどうでもよい存在なのです」


 美海を軽んじるような発言に、僕は心の底から腹が立った。

 でも、我慢しないとダメだ……。

 リヒトさんの気が変わらない内に、ここを離れないと……。


「……行こう」

「荷物を纏めるくらいの時間なら待てますが、いかがいたしますか?」

「……じゃあ、五分だけ待ってて」


 僕は急いで自分の部屋に戻ると、二枚の写真を手に取った。

 一枚目は、美海とお母さんと写ってるもの。

 二枚目は、一色隊のみんなに美海と大和くん、そしてぱかおが写ってるものだ。

 これは確か、夏休みに撮ったやつだったっけ……。

 ここに来てから写真はいっぱい撮ったけど、全員で写ってるのはほとんどないんだ……。

 写真の中の僕は、決して笑ってはいない。

 ……だけど、どこか幸せそうだった。

 この優しい思い出と、みんなの顔を絶対に忘れたくないから。

 適当な封筒にそれを入れると、僕は急いでリヒトさんの所まで戻る。


「もう、よろしいのですか?」

「……うん」

「では、参りましょう」


 リヒトさんと一緒に、僕は玄関を出る。

 その瞬間、大きな何かがリヒトさんに襲いかかったんだ……。

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