優しい場所を守るために、僕は
柊平さんと蒼一朗さんは、とても苦しそうに床に倒れてる……。
それなのに、傷だらけの体で立ち上がろうとしていた……。
「この程度で……!」
「勝ったと思うなよっ……!!」
二人とも、もう、やめて……。
立たなくて、いいから……。
「人間が、私に勝てるわけがないでしょう」
リヒトさんはそう言うと、柊平さんと蒼一朗さんに手刀を振り下ろす。
そしたら、二人はぴくりとも動かなくなっちゃったんだ……。
「柊平さん……! 蒼一朗さん……!」
「シン様、ご安心を。気絶しているだけです。人間の命を奪う趣味はありませんので」
僕に近付いてくるリヒトさんの動きが、一瞬だけ鈍る。
僕の体も、少しだけだるいように感じられた。
この空間に漂う、空気のせい……?
「まだ、諦めていなかったのですね」
「……彼を連れて行かせるわけにはいかないからね」
僕の足元で、理玖さんがハンカチを片手にさっきの睡眠薬を噴射していたんだ。
瓶は空になってるから、これを嗅げばリヒトさんだって動けなくなるはず……。
だけど、僕の予想を裏切ってリヒトさんは歩き続ける。
そして、あっという間に理玖さんの後ろに回ると腕を掴んで床に叩き付けたんだ……。
「このような薬は効きませんよ」
「……そうみたいだね」
リヒトさんも、僕と同じですぐに薬が抜ける体質なんだ……。
普通の人じゃ眠ってしまう量でも、全然眠くなってない……。
「悪さをするのは、この腕のようですね」
「……だったら、どうするっていうの」
「しばらく薬の調合を出来なくしましょうか。他の者たちへの見せしめにもなります」
「くっ……!」
理玖さんの手から、ミシッという嫌な音が聞こえる。
……リヒトさんは本気で、理玖さんの腕を折ろうとしてる。
もうここには、僕しかいないんだ……。
僕が、みんなを守らないと……!
「待って……! 僕、あなたと一緒に行くから……! もう、やめて……!!」
僕は覚悟を決めると、大きな声でそう叫んだんだ……。