冷たい赤
「はあっ!」
「せりゃっ!」
剣を持った柊平さんと、手にグローブをはめた蒼一朗さんがリヒトさんに向かっていく。
リヒトさんは美海と理玖さんを離すと、二人と戦い始めた……。
「美海……。理玖、さん……」
「……僕なら平気だ。腕を掴まれただけだから。彼女も、気絶してるだけみたいだね」
「よかった……」
僕はすぐに、美海と理玖さんに駆け寄った。
二人とも、怪我をしてなくてほんとによかった……。
「でも、どうして柊平さんと蒼一朗さんが……?」
「……君がなかなか戻ってこないから、様子を見に来たんだ。そうしたら、不穏な内容の会話が聞こえてきたからね。彼に、戦闘員を呼び戻してもらうように頼んだんだよ」
「彼って、晴久さん……?」
「……ああ。本当は彼女と連絡を取りたかったんだけど、任務中で繋がらなかったから」
「そう、だったんだ……」
柊平さんも蒼一朗さんも、用事を切り上げて帰ってきてくれたんだろうな……。
あとでちゃんと、お礼を言わなきゃ……。
そう思いながら、リヒトさんと戦う二人の方を見る。
僕はここで、信じられない光景を目にしたんだ……。
「くっ……!」
「くそっ……!!」
さっきまでリヒトさんと互角に戦ってた二人が、床に倒れてる……。
この一瞬の間に、何が起こったの……?
リヒトさんが素手で、柊平さんと蒼一朗さんは武器を持ってるのに……?
二人を倒したリヒトさんの瞳が、僕を捉える。
(無理だ……。この人からは、逃げられない……)
冷たい赤に捕らわれるように、僕の体はぴくりとも動かなくなっちゃったんだ……。