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透く花の色は  作者: 白鈴 すい
第四十四話
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今の僕にとって大切なのは

「……美海、待って。まだ、大事なことを聞いてないよ」

「だいじなこと……?」

「……うん。僕たちがお父さんの国に行ったとして、お母さんはどうなるの……?」

「おかあさんもいっしょにくらせるよ! ねっ、りひとくん!」

「残念ながら、それは出来ません。国に入ることが許されたのは、シン様とミウ様だけです」

「そんな……! かぞくなのに……!!」


 やっぱり、そうだよね……。

 僕と美海は、お父さんの血が入ってるから許されたんだ……。

 でもお母さんは違うから、一緒に暮らすことはできない……。


「……その国の住人になったら、もう、国の外に出ることもできない」

「はい、それが掟ですから。今回の私のように余程の理由がない限り、国から出ることは許されません。一生を国内で過ごしていただきます」

「……美海、よく聞いて。お父さんと一緒に暮らすことを選べば、もうお母さんには会えない。お母さんだけじゃなくて、透花さんに大和くん、この家の人たちにも会えなくなるんだ」

「そんなのやだよ……! みう、みんなのことだいすきなのに……!」

「……僕も、同じだ。お父さんに会うのは、諦めよう」

「でも……!!」


 ……美海が諦めきれない気持ちも、わからなくはないよ。

 でも僕は、お父さんを選んで他の大切な人たちに会えなくなるなんて絶対に嫌だ。


「……ごめんなさい。あなたと一緒には、行けません。お父さんにもそう伝えてください」

「……そうですか。仕方ないですね」


 僕が頭を下げてそう言うと、リヒトさんも納得してくれたような素振りを見せた。

 ……だから、何が起こったのかわからなかったんだ。


「では、少し手荒になりますが無理矢理お連れすることにします」

「あ……」


 気付いた時には、気絶した美海がリヒトさんの腕の中にいた。


「美海……!」

「抵抗されると厄介ですので、眠っていただきました。シン様、次はあなたですよ」


 感情の読み取れない表情で、リヒトさんが僕に近付いてくる。

 どうすることもできなくて、ぎゅっと目を瞑ってしまった。


「……うちの隊員に、なにしてるの」


 ……僕の後ろから聞こえてきたのは、冷たく感じるけどほんとは優しい声。

 理玖さんの、声だ……。

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