この人の顔を、僕は一生忘れない。
――――――――――ピンポーン。
呼び鈴の音に、僕は体をビクリと震わせる。
美海が、リヒトくんと一緒に帰ってきた……。
「心くん、お出迎えをお願いしてもいいですか。僕は手が離せそうにないので」
「……おやつを食べる前に、ちゃんと手を洗わせて。風邪をひくといけないから」
「……ん、わかった」
晴久さんと理玖さんに見送られ、僕は玄関に向かう。
リヒトくんって、どんな子なのかな……。
外国の子っぽい名前けど……。
美海の友達なんだから、僕も仲良くなれるといいな……。
そんなことを考えながら、玄関の扉を開ける。
「……おかえり。リヒトくんもいらっしゃ……」
僕は、予想外の光景に声が出なかった。
……美海の隣にいるのは、どう見ても子どもじゃなくて大人だった。
……浅黒い肌に赤い瞳のこの人の顔を、僕はあの日から一度も忘れたことはない。
「……美海、その人から離れてこっちに来て」
「え? しんにい、急にどうしたの?」
急に様子の変わった僕とその人の間で、美海は不思議そうな顔をしてる。
……でも、美海にはこの人に近付いてほしくない。
「……その人は、僕たち家族をバラバラにした人だよ」
だって、六年前に僕たちから父さんを奪った人なんだから……。