甘露煮もモンブランも栗きんとんも、全部好き。
「では、栗の皮を剥きましょうか。心くんは、専用の皮むき器を使ってくださいね」
「晴久さんは……?」
「僕は包丁で剥きます。怪我をしないように、気を付けてください」
「ん……。皮、柔らかくなってるから平気……」
「水につけておくと、柔らかくなって剥きやすいんです」
しばらく勉強をしてたら、晴久さんが帰ってきた。
集中できなかったから、おやつ作りを手伝うことにしたんだ。
僕と晴久さんが栗の皮を剥いてると、理玖さんがキッチンに入ってくる。
理玖さん、うちにいたんだ……。
普段から静かな人だから、全然気付かなかった……。
「理玖さん、いらっしゃったんですね」
「……ああ、診療所の方に。それ、今日のおやつ?」
「はい。ぜんざいを作って、それに入れようと思ってるんです」
「……ふーん」
あ、理玖さん、ちょっと嬉しそう……。
ぜんざいなら、卵とか牛乳が入ってないから安心して食べれるもんね……。
「……なにか、手伝おうか」
「じゃあ、鍋に水とお砂糖を入れて火にかけてもらえますか?」
「……砂糖を溶かせばいいの」
「はい。溶けたら、そこに栗を入れて煮詰めていきますから」
――――――――――ピリリリリリ。
僕たちがおやつを作ってると、家電が鳴った。
仕事関係の電話は、全部透花さんに直通でいくようになってる。
……だから、この電話の番号はここに住んでるみんなしか知らないんだ。
「……僕、出てくる」
「はい。お願いしますね」
「……よろしく」
電話は苦手だけど、みんなからなら大丈夫……。
そんなことを考えながら廊下に出て、僕は受話器を取った。
「……もしもし」
『もしもし! しんにい!?』
電話は美海からだった。
いつもなら、連絡なんてしないでそのまま帰ってくるのに……。
何かあったのかな……?
「……うん、僕だよ。どうしたの?」
『あのね! 今からおうちにりひとくんをつれていってもいい!?』
「え……?」
予想外の言葉に、僕は無言でその場に立ち尽くしちゃったんだ……。