お兄ちゃんは心配症
「いってきまーす!!」
「……いってらっしゃい」
僕は、元気よく出かける美海を玄関で見送った。
……去年の、秋くらいからだったかな。
休みの日に、一人で遊びに行くことが増えたのは。
それがずっと続くから、どこで誰と何をしてるのかを聞いたこともある。
「ちかくのこうえんで、りひとくんとおしゃべりしてるんだよ!」
……大事な妹が男の子と二人きりで遊んでいるという事実に、僕は動揺を隠せなかった。
でも、これも成長の証なんだよね……。
美海は明るくて優しい子だから、友達も多いだろうし……。
まだ小さいから、男の子とか女の子とか関係なく遊ぶんだよ……。
……なんとか自分を納得させ、あまり深く追求することはしなかったんだ。
美海が閉めたドアが開いて、蒼一朗さんと大和くんが帰ってくる。
二人で、散歩でもしてたのかな……?
「美海、今日も遊びに行ったんだな」
「ん……。大和くん、リヒトくんって知ってる……?」
僕が聞くと、大和くんはふるふると首を横に振った。
……大和くんが知らないってことは、学校の子じゃないんだ。
じゃあ、どこでその子と友達になったんだろう……。
「そっか……。学校の子じゃ、ないんだ……」
「子どもの頃って、仲良くなればあんまり学校とか関係ないからな。美海の性格なら、誰とでもすぐに打ち解けられるだろうし。そんなに心配しなくても平気だと思うぜ」
「僕もそう思う、けど……」
「GPSの反応は、ちゃんとその公園にあるんだろ?」
「うん……。いっつも、うちから一番近い公園にいるよ……」
「じゃあ、今度はうちに連れてこいって言えばいいんじゃねーの? 外だと寒いだろうし」
「そう、だね……。帰ってきたら、言ってみる……」
琉生くんの誕生日パーティーで起きた誘拐事件に巻き込まれて以来、美海と大和くんは位置情報が分かる端末を持たされてる。
あんまり外出が多いから、今年になってから初めてそれを確認してみたんだ……。
いくら心配だからって、美海を疑ってるみたいでこれまではやらなかった……。
……こっそり後をつけていくことも考えたけど、これも同じ理由でやめた。
今では、美海が一人で遊びに行く度に確認するようになっちゃったけど……。
ほんとにいつも公園にいるから、こんなに心配する必要ないのもわかってる……。
(でも、なんとなく気になる……。……リヒトくんの顔を知らないからかな? うちに連れて来てくれれば、どんな子かわかって安心する、はず……。きっと……)
お兄ちゃんとして、かわいい妹がよく遊んでる存在が気になって仕方ないんだ。
相手が男の子だから、その気持ちはもっと強くなってるんだろうけど……。
……この日は、美海が帰ってくるまでずっとソワソワしてた。
ハンモックでの昼寝も、いつもみたいに捗らなかったんだよ……。