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透く花の色は  作者: 白鈴 すい
第四十四話
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お兄ちゃんは心配症

「いってきまーす!!」

「……いってらっしゃい」


 僕は、元気よく出かける美海を玄関で見送った。

 ……去年の、秋くらいからだったかな。

 休みの日に、一人で遊びに行くことが増えたのは。

 それがずっと続くから、どこで誰と何をしてるのかを聞いたこともある。


「ちかくのこうえんで、りひとくんとおしゃべりしてるんだよ!」


 ……大事な妹が男の子と二人きりで遊んでいるという事実に、僕は動揺を隠せなかった。

 でも、これも成長の証なんだよね……。

 美海は明るくて優しい子だから、友達も多いだろうし……。

 まだ小さいから、男の子とか女の子とか関係なく遊ぶんだよ……。

 ……なんとか自分を納得させ、あまり深く追求することはしなかったんだ。

 美海が閉めたドアが開いて、蒼一朗さんと大和くんが帰ってくる。

 二人で、散歩でもしてたのかな……?


「美海、今日も遊びに行ったんだな」

「ん……。大和くん、リヒトくんって知ってる……?」


 僕が聞くと、大和くんはふるふると首を横に振った。

 ……大和くんが知らないってことは、学校の子じゃないんだ。

 じゃあ、どこでその子と友達になったんだろう……。


「そっか……。学校の子じゃ、ないんだ……」

「子どもの頃って、仲良くなればあんまり学校とか関係ないからな。美海の性格なら、誰とでもすぐに打ち解けられるだろうし。そんなに心配しなくても平気だと思うぜ」

「僕もそう思う、けど……」

「GPSの反応は、ちゃんとその公園にあるんだろ?」

「うん……。いっつも、うちから一番近い公園にいるよ……」

「じゃあ、今度はうちに連れてこいって言えばいいんじゃねーの? 外だと寒いだろうし」

「そう、だね……。帰ってきたら、言ってみる……」


 琉生くんの誕生日パーティーで起きた誘拐事件に巻き込まれて以来、美海と大和くんは位置情報が分かる端末を持たされてる。

 あんまり外出が多いから、今年になってから初めてそれを確認してみたんだ……。

 いくら心配だからって、美海を疑ってるみたいでこれまではやらなかった……。

 ……こっそり後をつけていくことも考えたけど、これも同じ理由でやめた。

 今では、美海が一人で遊びに行く度に確認するようになっちゃったけど……。

 ほんとにいつも公園にいるから、こんなに心配する必要ないのもわかってる……。


(でも、なんとなく気になる……。……リヒトくんの顔を知らないからかな? うちに連れて来てくれれば、どんな子かわかって安心する、はず……。きっと……)


 お兄ちゃんとして、かわいい妹がよく遊んでる存在が気になって仕方ないんだ。

 相手が男の子だから、その気持ちはもっと強くなってるんだろうけど……。

 ……この日は、美海が帰ってくるまでずっとソワソワしてた。

 ハンモックでの昼寝も、いつもみたいに捗らなかったんだよ……。

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