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透く花の色は  作者: 白鈴 すい
第四十三話
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彼らに幸あらんことを

 一色隊が見つけた爆弾は本物で、新年になった瞬間に予告通りに爆発した。

 しかしその規模は極めて小さく、城どころか塔を破壊することすら叶わなかった。

 近くにいた透花と理玖も、怪我を負わなかったほどだ。

 二人は上記の内容を、国と一色隊の隊員たちに説明した。

 これに疑問を持つ者もいたが、せっかく平和に迎えることが出来た正月なのだ。

 野暮な考えは心の中に仕舞い、穏やかに過ごすことを選択したらしい。


「とうかねえ! このあまいにおいはなに!? おいしそう!」

「これはね、甘酒の香りだよ」

「あまざけ? おさけなの? じゃあ、みうはのめないんだ……」

「子どもが飲んでも大丈夫なものもあるけれど、ここのはどうだろうね」

「それなら、お酒を使わずに作りましょう。二人とも、家に帰るまで我慢できますか?」

「うん! みう、がまんできるよ!」


 晴久の言葉に、大和も大きく頷く。

 大和も飲んでみたいようで、美海の隣でソワソワしていたのだ。

 一色隊は現在、全員が着物を着て神社に初詣に来ている。

 夏祭りの時と同様に透花と颯の手によって周到に用意されていたので、断りたくても断り切れなかった者もいるようだ。

 本日は一月二日なので、あの大晦日から丸一日が経過している。

 本来ならばこの初詣は、元日に行われる予定だった。

 だが、さすがに皆に疲労が見られたので昨日はゆったりと過ごしたのだ。

 休息を取ったことで、透花もいつも通りに戻ったように見える。

 掌の怪我も大したことがなかったようで、今日の初詣にも笑顔で参加していた。


「さてと、お参りも終わったことだし帰ろうか」

「うん! あまざけはやくのみたい! あとはね、はねつきもやってみたいんだ!」

「………………………………!!」

「大和くんは凧揚げをやりたいんだね。今日はいい天気だから、どっちも楽しいだろうなぁ」


 両手で大和と美海と手を繋ぎながら、透花は皆の先頭を歩いていく。

 その背中にどこか違和感を覚える者、全く気付いていない者、正月のご馳走で頭がいっぱいの者、寒くてとにかく早く帰りたい者など、隊員たちはそれぞれ別のことを考えている。

 だが、お参りの時に神に祈った内容には、一つの共通点があった。


((((((((この穏やかな毎日が、長く続きますように……))))))))))


 皆、この優しい日常が末永く続くことを望んでいるのだ。

 形あるものは、いつか必ず壊れる。

 形のないものも、永遠に続くことは難しいだろう。

 だが、今はただ、彼らの想いが少しでも長く続くことを願おう――――――――――。

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