黎明
「……理玖、さっきはありがとう」
「……なんのこと」
「……心くんに怪我しているのって聞かれた時、話を合わせてくれたでしょう?」
「……突然、彼らに本当のことを言うわけにもいかないだろう」
「……うん、そうだよね」
「……君、いつになったら話すの」
「……話さなきゃいけないとは、いつも思っているよ」
「……でも、結局話してない。それって、彼らのことを信頼してない証だと思うけど」
「そんなことはっ……!」
「……隠し事をされてる彼らの立場に立っても、同じことが言えるわけ」
「そう、だよね……。そろそろ、本当に話さないと……」
「……君にとって、簡単に話せることじゃないっていうのは分かってるつもりだ。でも、これだけは言わせてもらいたい。彼らは、君が考えるよりも君のことを信頼してる。それは、簡単に揺らぐものじゃないはずだ。君は、その信頼に応えなければならないと思うよ」
「……うん。絶対に話すから、もう少しだけ心の準備をさせて……?」
「……君自身のことだ。時期は、君が自分で決めなきゃ意味がない」
「……その時は、隣にいてくれる?」
「……何言ってるの。そんなの、当たり前だろう」
「……ありがとう、理玖」
「……礼を言われるようなことじゃない」
夜と朝の香りが混ざる、不思議な時間。
二人の会話を聞いていたのは、白む空と神々しい日の光だけだった――――――――――。