みんなのもとに
「……二人とも、ご無事で何よりです」
「おい、大丈夫か……!?」
「透花さん、りっくん……。めっちゃくちゃ心配したよ~!」
「いやあ、一時はどうなることかと思いましたよ」
「い、生きた心地がしませんでした……」
「とうかねえー!! りくにいー!!」
「………………………………!!」
「うおおおおお! 本当によかった! ほんっとうによかったっす!!」
「……怪我、してる?」
皆は一斉に透花と理玖に駆け寄り、思い思いの言葉をかけた。
透花に近付くと、血の臭いが心の鼻を掠める。
見ただけでは分からないが、どこかに怪我をしているのだろうか。
「ああ、うん、えっと……。爆発は大したことなかったのだけれど……」
「……ここまで戻る間に転んで、掌を擦り剥いたんだ」
透花の掌は、理玖のスーツに隠れて見えない。
だが確かに、血の臭いはそこからするようだ。
二人の無事が分かると、皆は矢継ぎ早に質問をしていく。
「爆発は、結局なかったのでしょうか?」
「俺もそれ、気になってたんだ。爆発音が聞こえたんだけど、気のせいか?」
「ううん、気のせいじゃないよ~! 花火の音とは別の音がしたもん!」
「じゃあ、爆発自体はあったけど極めて小規模だったってことですかね?」
「そうかもしれないですね。現に、お二人は無事ですし」
「爆弾を仕掛けた奴ら、火薬の量でもミスったんすかね!」
「それにしては、濃い臭いだったけど……」
皆の質問を一通り聞くと、透花は少しだけ困ったように微笑んだ。
「大体それであっているよ。詳しくは、家に帰ってから説明するね。私は色々と報告があるから、先に戻っていてくれるかな。柊平さん、みんなのことをお願いできる?」
「……かしこまりました。報告の供はいなくてもよろしいでしょうか」
「それは、一緒にいてくれた理玖に頼もうと思っています。大丈夫かな?」
「……わかった」
こうして一色隊は、再び二手に分かれることになった。
常に凛とした雰囲気の透花が疲れていることに、果たして何人が気付いただろうか。
透花と理玖が様々な報告を終え屋敷に戻ったのは、明け方になってからだった。
皆にとって波乱万丈になるであろう一年が、始まる――――――――――。