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透く花の色は  作者: 白鈴 すい
第四十三話
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熱を孕む瞳

 理玖は、城内のとある場所で困り果てていた。

 とりあえず知っている階まで来たものの、肝心の透花がいる場所が分からないのだ。

 先程から連絡しているが、彼女がそれに応じることはなかった。


(仕方ない……。他の誰かに……)


 理玖が、他の隊員と連絡を取ろうとした時のことだった。


「あれ? りっくんじゃん。こんなとこで何してんの~?」


 機械越しではない声が、理玖の耳に届く。

 それは、塔から戻ってきた虹太のものだった。

 他の皆もいるが、透花の姿だけが見当たらない。


「……彼女は、何でいないの」

「隊長ならば、爆弾処理班の到着を待っている。私たちは、先に戻るように言われたんだ」

「……そう」


 柊平の答えを聞いた理玖は、湊人の方へと向き直る。


「……その場所までの、地図が欲しい」

「え? どうしたんですか、急に。苦労して取ったデータなんですから、そう簡単には……」

「……報酬なら、後でいくらでも払うから。……頼む」


 あまり感情を宿すことのない理玖の瞳に、見たことのない熱意が籠っている。

 その視線に逆らえないと感じた湊人は、いつの間にか頷いていた。


「……わかりましたよ。春原さんの通信機に送ります。それでいいですか?」

「……ありがとう」

「そんなに素直にお礼なんて言わないでください。まったく、調子狂うなぁ」


 湊人の端末から、城内の詳細な地図が送られてくる。

 理玖はそれを確認すると、透花がいる塔へと一目散に駆け出した。


「あっ! ちょっと! 春原さん!?」

「りっくんが走ってるとこなんて初めて見たよ~」

「俺もだよ。運動は苦手なのかと思ってたけど、そんなことないのな」

「うん……。普通に、速いね……」

「そうだな! 今度、競走してみてー!」

「……それにしても、一体どうしたというんだ」


 理玖の様子が、普段とは明らかに違う。

 だが、それが何故なのか分かる者はいない。

 その場に残された隊員たちは、走り去った理玖の背中をぽかんとした表情で見送ることしか出来ないのだった――――――――――。


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