優しく残酷な嘘
塔の中を捜索すると、すぐに爆弾は見つかった。
透花は皆から少し離れて処理班に連絡をするが、想定外の答えが返ってきてしまう。
「……すぐには、来ていただけないのですね」
『ああ。他の場所でも複数の爆弾が見つかっている。そのほとんどがダミーである可能性が高いとは思うのだが、それを確かめるためにはプロの目が必要だ』
「……つまり、既にこちらに割ける人手はないということですか」
『……そういうことになるな。手が空き次第、すぐにそちらに向かわせよう』
「……わかりました。よろしくお願いします」
通信を切った透花は、いつになく難しい顔をしていた。
だが、すぐに笑顔に戻ると隊員たちにこう言い放ったのだ。
「すぐに、爆発物処理班が来てくれるって。私たちの仕事はここまでだよ」
その言葉に、皆はほっとしたようにため息を吐く。
「私はここに残って処理班の到着を待つから、みんなは先に戻っていてくれるかな」
「……隊長お一人で、ですか? 供の者をつけられた方がよいのではないでしょうか」
「ただ待っているだけだから平気だよ。処理班が来たら、私もすぐにこの場を離れるから」
「……かしこまりました。では、一足先に戻っています」
「うん。理玖たちと合流した後のことは、柊平さんに任せるね。周りを見て、臨機応変に動いてもらえたら助かります」
「……わかりました。みんな、行くぞ」
柊平が皆を率いて去っていく姿を、透花は笑顔で見送った。
しかし、彼らの姿が見えなくなるとその笑顔は途端に消え去ってしまう。
そして、全ての感情を削ぎ落としたかのような表情で爆弾と向かい合うのだった――――――――――。