表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
透く花の色は  作者: 白鈴 すい
第四十三話
532/780

虚ろな瞳に映るのは

「こっち……」

「それにしても、お城って広いね~。俺の実家も大きかったけど、比べ物にならないよ~」

「なんだそれ、嫌味か」

「……二階堂。データを取るのもいいが、先程から足が止まっているぞ」

「いやあ、すみません。でも、こういう機会でもないと取れないデータなので」

「透花さん、足元気を付けてくださいっす!」

「ありがとう、颯くん」


 心と透花の案内で、皆は城の奥へと進んでいた。


「……この辺から、すごく強い火薬の臭いがするよ」


 心が足を止めたのは、一つの塔の前だった。

 周りには草木が生い茂り、あまり人の手は加えられていないようだ。


「じゃあ、この辺りを探してみよう。怪しい物を見つけたら、触らずに私に知らせてね」


 透花の言葉を合図に、隊員たちは周辺の捜索を開始する。

 しかし、十分、二十分と探しても不審な物は見つけられなかった。


「……周りにないとなると、この塔の中が怪しいかな」

「この中って言ってもよ、どうやって入るんだ? この塔、入口がねーじゃん」


 蒼一朗の言葉通り、この塔には入口がなかった。

 それはまるで、外からの侵入者を拒んでいるようだ。


「私の記憶が正しければ、確かここに……」


 透花は外壁の煉瓦を一つ外すと、中にあるボタンを押した。

 すると、ゆっくりと扉が現れ、重々しい音を響かせながら開いたのだ。


「開いた、ね……」

「ああ……」

「わ~! すご~い!」

「なんかゲームの世界みたいっすね!」

「呑気なこと言ってる場合かよ」

「……透花さん、よくこんな場所にボタンがあるって知ってたね」

「……うん」


 湊人からの問い掛けに、透花は曖昧な笑みを返す。

 真っ暗な扉の奥を見つめる彼女の瞳は、ひどく虚ろなものだった――――――――――。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ