虚ろな瞳に映るのは
「こっち……」
「それにしても、お城って広いね~。俺の実家も大きかったけど、比べ物にならないよ~」
「なんだそれ、嫌味か」
「……二階堂。データを取るのもいいが、先程から足が止まっているぞ」
「いやあ、すみません。でも、こういう機会でもないと取れないデータなので」
「透花さん、足元気を付けてくださいっす!」
「ありがとう、颯くん」
心と透花の案内で、皆は城の奥へと進んでいた。
「……この辺から、すごく強い火薬の臭いがするよ」
心が足を止めたのは、一つの塔の前だった。
周りには草木が生い茂り、あまり人の手は加えられていないようだ。
「じゃあ、この辺りを探してみよう。怪しい物を見つけたら、触らずに私に知らせてね」
透花の言葉を合図に、隊員たちは周辺の捜索を開始する。
しかし、十分、二十分と探しても不審な物は見つけられなかった。
「……周りにないとなると、この塔の中が怪しいかな」
「この中って言ってもよ、どうやって入るんだ? この塔、入口がねーじゃん」
蒼一朗の言葉通り、この塔には入口がなかった。
それはまるで、外からの侵入者を拒んでいるようだ。
「私の記憶が正しければ、確かここに……」
透花は外壁の煉瓦を一つ外すと、中にあるボタンを押した。
すると、ゆっくりと扉が現れ、重々しい音を響かせながら開いたのだ。
「開いた、ね……」
「ああ……」
「わ~! すご~い!」
「なんかゲームの世界みたいっすね!」
「呑気なこと言ってる場合かよ」
「……透花さん、よくこんな場所にボタンがあるって知ってたね」
「……うん」
湊人からの問い掛けに、透花は曖昧な笑みを返す。
真っ暗な扉の奥を見つめる彼女の瞳は、ひどく虚ろなものだった――――――――――。