……気付かないわけ、ないだろう。
「……というわけなの」
透花はすぐさま一色隊の面々を集めると、現在の状況を説明した。
そして、冷静に役割を決めていく。
「まずは、ハルくんと理玖。二人には、大和くんと美海ちゃんについていてほしい。警護班に誘導されて安全な場所に避難しているとは思うけれど、不安だと思うから。それに加えて、気分が悪い人や怪我をしている人がいたら手を貸してあげてね」
「わ、わかりました!」
「……わかった」
本日のパーティーには、大和と美海も参加している。
だが、夜通し起きているわけにもいかないので現在は王宮の一室で眠っていた。
他の子どもたちと同様に、ベビーシッターがついているはずだ。
「他のみんなは、私と一緒に爆弾の捜索にあたってもらいます。他の軍人たちは恐らく探していないであろうお城の奥の方に向かうよ」
「透花さん、ちょっと待ってよ」
透花に異を唱えたのは、湊人だ。
「彼らが捜索にあたれないのは、地図を持ってないからでしょ? 僕ですら、入ることが許されている一部分の地図しか持ってないんだから。そんな場所に足を踏み入れれば、爆弾を探してる内に迷って、時間が来てボカンってことになりかねないと思うんだけど」
この王宮は、とてつもない広さなのだ。
軍人や貴族が入ることを許されているのは、ほんの一部分に過ぎない。
王族しか知らない、おびただしい数の塔や廊下などが存在している。
その見取り図は、王族の命を守るためにどこにも公開されていないのだ。
「……大丈夫だよ。王宮の中のことなら、とても詳しいから」
透花はそう言うと、いつもとはどこか違う笑みを浮かべる。
「迷ったりしないから、安心して。それに、湊人くんのパソコンなら通った場所から地図にしていくことなんて簡単でしょう? それを使えば、戻れなくなることなんてないよ」
「……了解。あなたがそこまで言うなんて、よっぽど自信があるんだろうからね」
「ありがとう。じゃあ、更に詳しいことについて説明していくね」
透花の笑顔は、いつも通りの柔らかなものに戻っている。
この小さな変化に気付いた人間が、この場に一人だけいたのだった――――――――――。