おおつごもりの重要任務
「……すまない。貴殿の力を貸してもらえないだろうか」
透花に話しかけてきたのは、見たことのある顔の男だった。
琉生の生誕パーティーの時に、会場の警護を任されていた軍人だ。
多少なりとも因縁のある透花の力を借りたいとは、よほど急を要することなのだろう。
「私でよろしければ、お話を聞かせてください」
「……恩に着る。こちらに来てくれ」
透花と柊平は、男と一緒に会場の端まで行く。
人目につかない場所に来ると、男は一枚の紙を取り出した。
「……先程、小包と一緒にこのような物が王宮に届けられた」
「これは……」
そこに書いてあったのは、犯行予告と思われる文章だった。
王宮のどこかに、爆弾を仕掛けた。
見つけ出し解除しなければ、日付が変わった瞬間に爆発するという内容が書かれている。
「……この手紙と一緒に届いた小包に、本物の爆弾が入っていた。この会場までは聞こえなかったと思うが、受け取った隊員は爆発に巻き込まれ病院で治療を受けている」
「……治療を受けているということは、命はあるのですね」
「……ああ。それほど大きな怪我もしておらず、命に別状はない。私たちに、手紙の内容がただの悪戯ではないと知らしめるための爆弾だったようだ」
「……なるほど。それで、私は何をすればいいのですか?」
「……これから、私の部下たちは二手に分かれて行動する予定だ。爆弾を捜索する隊と、会場の人々の避難を誘導する隊。貴殿の隊には、爆弾の捜索に加わっていただきたい」
「分かりました。ですが……」
「……心得ている。貴殿の隊の動きは、貴殿に一任する。自由にしてもらって構わない。爆破の時刻が、本当に午前零時がどうかも分からない。何か異変を感じるようなことがあれば、貴殿の判断で避難してほしい」
「気を遣っていただき、ありがとうございます。では、早速取りかからせてもらいますね」
「……爆弾を見つけ次第、私に連絡を入れてくれ。すぐに爆発物処理班を派遣する」
「分かりました。失礼いたします」
琉生の件が響いているのか、男は透花に対して始終丁寧に接していた。
彼の乞うような視線を背中で感じながら、透花はその場を離れるのだった――――――――――。