さよなら今年、よろしく来年
一色隊はこの日、王からの要請を受けとある任務に就いていた。
今日は十二月三十一日、大晦日である。
今年最後の任務は、王宮で開かれるカウントダウンパーティーに参加することだった。
琉生の生誕パーティーの時とは違い、警護は任されていない。
そのため、皆は幾分リラックスした様子で参加していた。
だがこのパーティーは、夜通し行われるのだ。
すっかり人に酔ってしまった晴久、人の多さに辟易としていた理玖、女性の数に圧倒された颯の三人は、既に会場にはいない。
少し離れた場所で、休憩をしていることだろう。
残りの五人と透花は、会場に留まっていた。
湊人は相変わらず、地位のある者たちとのパイプ作りに勤しんでいる。
心は夢中でご馳走を頬張り、蒼一朗はそれに付き合っていた。
「柊平さん、リラックス、リラックス」
「……隊長、申し訳ありません。私が不慣れなために……」
「ううん、大丈夫だよ。ちゃんとエスコート出来ているから安心して」
本日の透花のエスコートは、虹太ではなく柊平のようだ。
パーティーが開始した時点では、透花の隣にいたのは虹太だった。
だが、華やかな容姿をしている虹太は令嬢たちの目を引くらしい。
「そこの殿方、椎名様と仰ったかしら?」
「俺のこと? うん、そうだよ~。どうしたの?」
「ご迷惑でなければ、私と一曲踊っていただきたいと思いまして」
「あんまりうまくないけど、それでもいいなら俺はオッケーだよ~☆」
ダンスを申し込まれると、フェミニストの虹太は基本的に断らない。
そのため、緊張した面持ちの柊平が代わりに透花をエスコートしているというわけだ。
本日のパーティーでは、十二時になった瞬間に盛大に花火が打ち上げられる。
王宮の外でも見えるので、城に入ることが許されない庶民たちも楽しみにしているのだ。
十二時まであと二時間ほどになったところで、警護の者たちが慌ただしくなってきた。
参加者たちは全く気付いていないが、透花はそれを見逃さない。
平和なパーティーを脅かす何かが、着実に迫っていた――――――――――。