真っ白な奇跡
箱から飛び出た物は、キラキラと輝きながら舞い落ちる。
まるで、雪が降ってきたかのように――――――――――。
「わあ! きれーい!!」
「………………………………!!」
「すごい……。雪みたい……」
(シン! ユキってなんだ!? オレ、こんなの初めて見たぞ!)
大和と美海、そしてぱかおは大興奮である。
特にぱかおは今まで雪を見たことがなかったので、嬉しそうに部屋中を走り回っていた。
他の皆も、目の前の信じがたくも美しい光景に感動しているようだ。
(溶けない……。本物の雪じゃないんだ……)
透花が、掌でそれを受けてみる。
だがそれは溶けることなく、そのままそこに留まっていた。
「ん? あれ? なんか紙が落ちてきたよ?」
一枚の紙が、雪のようなものと一緒に虹太の足元に落ちてくる。
虹太はそれを拾うと、書かれている文章を読み始めた。
「え~っと、なになに……。『大和くん、美海ちゃん、メリークリスマス! 虹太くんは友達じゃからな! 特別なプレゼントを贈っちゃうぞい☆』って書いてあるけど……」
「すごい! サンタさん、おへんじくれたね! プレゼントもまたくれた!」
「………………………………!!」
どうやら虹太の友人は、職業サンタではなく本物のサンタクロースだったらしい。
大和と美海の願いに応え、”みんなが笑顔になれるプレゼント”をくれたのだ。
自分の意思で自在に体の大きさを操れるアルパカも、人魚も雪男もいる世界だ。
サンタクロースが実在したとしても、おかしくはないだろう。
しばらくして照明が元に戻るまで、皆はその幻のような光景に酔いしれた。
明るくなった部屋には、先程まで降っていたものの形跡は一切なかった。
それは、サンタクロースから贈られたほんの一時の奇跡だったのかもしれない。
この出来事は皆の胸の中に、特別な想い出として刻まれることになる。
――――――――――シャンシャンシャンシャンシャン。
「ほっほっほ、メリークリスマス!!」
その夜、サンタクロースの笑い声とトナカイの鈴の音を聞いた者が大勢いたという。
恐らくそれは、空耳ではないのだろう――――――――――。