大きな大きなおいしい丸太
夜は、晴久特製の豪勢なクリスマスディナーが振る舞われた。
鶏の丸焼きやローストビーフなどの普段は食べられない料理に、年少組は夢中である。
大人組も、いつもより箸や酒が進んでいるように見えた。
食事が終わると、待ちに待ったクリスマスケーキの時間だ。
「張り切って作ったら、ちょっと大きくなっちゃいました」
「………………………………!!」
「………………………………」
晴久が照れたように微笑みながら持ってきたのは、全長一メートルは優に超えるであろう大きなブッシュドノエルだった。
一人では運べないため、透花の手を借りている。
そのケーキを見た心は目を輝かせ、理玖は胸焼けを起こしため息を吐いた。
「美海ちゃん、どれくらい食べれますか?」
「これくらい!」
「はい、どうぞ。大和くんは?」
「………………………………!!」
「これくらいですね。心くんはどうしますか?」
「………………………………」
心も美海と大和の真似をし、自身の両手でケーキの大きさを示す。
それは、軽く三十センチメートルを超えていた。
「はい、どうぞ。みなさんに配ってもまだ残っていたら、それも食べてください」
「ありがと……」
常人ならば驚くような量でも、心はぺろりと平らげてしまうのだ。
それを分かっている晴久は、何のためらいもなく大きなケーキを心の皿に盛る。
「あっ、理玖さんには別のケーキを用意してありますので、後で持ってきますね」
「……どうも。でも、別にいい。冷蔵庫から取ってくるのくらい、自分でやるよ」
その後も晴久は、皆にケーキを切り分けていく。
「はるにい、たべていい!?」
「食べていい……?」
「はい、どうぞ。召し上がれ」
全員にケーキが渡ると、結城兄妹が待ち切れないといった様子で口を開いた。
「わーい! いっただきまー……!? え!?」
それは、美海がフォークでケーキを掬い口に運ぼうとした瞬間のことだった。
突如、部屋の照明が消えたのだ――――――――――。