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透く花の色は  作者: 白鈴 すい
第四十二話
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みんな、たいせつ

 あれから朝食を終えた一色邸では、皆が思い思いの時間を過ごしていた。

 美海は、早速ギターを弾くために虹太と一緒にサロンへ向かった。


「しんにい、ごめんね。今日は、いっつもギターおしえてくれるこうたにいゆうせん!」


 心は、妹の新しい楽器での演奏を誰よりも早く聴きたいと願った。

 だが、師匠である虹太を優先するということで断られてしまったのだ。

 それは、大和も同じである。

 大和は現在リビングにて、プレゼントされたばかりの将棋盤で湊人と対局をしている。

 こちらも、初戦の相手には蒼一朗が立候補した。


“そういちろうおにいちゃん、ごめんなさい。ぼく、みなとおにいちゃんとさしたい”


 そう書かれた紙を見せられては、蒼一朗も諦めるしかないだろう。

 兄二人は弟妹の成長が嬉しくも、自分から離れていくことに寂しさを覚えるのだった。


「……隊長、少しよろしいでしょうか」


 透花がソファで寛いでいると、柊平が小さな声で話しかけてきた。


「うん、大丈夫だよ」

「……その、プレゼントありがとうございました」

「いえいえ、こちらこそありがとう。八個も貰っちゃって驚いたけど、とても嬉しかったよ」

「……恥ずかしながら、皆の意見が纏まらなかったのです。当初は日頃の感謝を込めて全員で一つの贈り物をする予定だったのですが、皆隊長に贈りたい物がバラバラで……」

「そうだったんだ。通りで、みんなの個性が出てるプレゼントだなぁと思ったよ」

「……隊長は、二人の手紙の中身をご存知だったのですか?」

「ううん、知らなかったよ」

「ではなぜ、私たちに贈り物を……?」

「柊平さんたちが、私にプレゼントをくれた気持ちと同じだよ。私、みんなにはとっても感謝しているんだ。だから、何か贈り物をしたいと思ったの。まさか大和くんと美海ちゃんがあんなことをお願いしていたなんてね。プレゼントを用意していて、本当によかった」


 透花の柔らかな視線が、真剣に次の手を考えている大和へと注がれる。


「……そうだったのですね」

「うん。あっ、柊平さん。貰ったグラスを使いたいから、近い内に一緒にお酒を飲もうね。素敵なグラスがもっと綺麗に見えるように、とっておきのシャンパンを開けるから」

「……はい、楽しみにしておきます」


 透花の笑みに、柊平も柔らかな口調で返事をする。

 こうしてクリスマスの日中は、穏やかに、そして緩やかに過ぎていったのだった――――――――――。

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